円売りが再び加速してきた。円相場は25日の海外市場で一時、1ドル=91円台まで下落した。海外の一部当局者から出ていた円安誘導批判を麻生太郎財務相が一蹴。円高是正に向けた政策が続くとの期待から、一段の円安を予想する見方が強まった。中長期の為替水準の指標となる購買力平価でみると、円は95円程度が適正との分析もある。株価上昇の最大の材料である円安はどこまで進むのか――。
「為替操作にはまったくあたらない」。麻生財務相は25日の記者会見で、安倍晋三政権が円安誘導しているとの海外からの批判に反論した。足元の円相場は「円高修正の動き」と強調。もう一段の円安水準を政府が容認しているとの見方が市場で広がった。
■強気の財務相
24日にはドイツのメルケル首相が円安傾向に懸念を表明。2月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を控え、ロシアの当局者も「通貨戦争」という表現まで使って円安に不満を示していた。
強気の麻生発言に「米国がいまの円安・ドル高を容認している可能性がある」(外国銀行)との観測も浮上した。実際、米国で為替政策を担当する米財務省からは、いまのところ円安批判は表だって聞かれない。
「日本がついに量的緩和に政策転換した」。25日の東京市場では、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に参加している著名投資家のジョージ・ソロス氏が安倍政権の経済政策を評価する発言をしたと伝わったことも、投機筋の円売りに拍車をかけた。
市場関係者が注目するのは大胆な金融緩和と財政出動を柱とする安倍政権の政策だけではない。最近の円安の底流には、日本の貿易収支の構造変化もある。燃料輸入の高止まりなどから、2012年の貿易赤字が過去最大になったことに注目する向きは多い。
貿易赤字が定着し、輸出で稼いだ外貨を売って円を買うよりも、輸入代金の支払いのために円を売る方が大きい。みずほコーポレート銀行の唐鎌大輔マーケット・エコノミストは「アベノミクスが始まる前から、円相場は構造的な円安局面に入っていた」と指摘する。
国際通貨研究所が企業物価指数からはじいた昨年9月時点の購買力平価では、円相場の水準は95円台半ば。日本経済研究センターの岩田一政理事長も、購買力平価など各種の指標からみると、円相場は95円程度でようやく均衡水準と分析する。円安方向への修正余地がまだあるとの見方だ。
■売越額は高水準
投機筋の動向を示すシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物取引の非商業部門をみると、直近1月15日時点の円の対ドルでの売越額は8216億円と、08年のリーマン・ショック後では最も高い水準にある。
だが、1ドル=110~120円台で推移していた06年から07年にかけての売越額は2兆円前後に膨らんでいた。市場関係者の間では「投機筋には円売り余力がまだある」との見方が多い。
円安は燃料など輸入物価の上昇を通じて、中小企業や農家には負担増になることが多い。このため岡村正・日本商工会議所会頭や石破茂・自民党幹事長は85~90円が適正水準との認識を示しているが、市場では想定レンジを90~95円に切り下げる動きが出ている。
購買力平価 国は違っても同じモノやサービスの価格は一つであるという「一物一価の法則」が成り立つ時の為替相場の水準のこと。例えば、ハンバーガー1個の値段が米国で1ドル、日本で100円の場合は、1ドル=100円に落ち着くはずだとの考え方が基になっている。購買力平価は為替相場の適正水準を示す物差しの一つとされ、消費者物価指数や企業物価指数から算出する。実際の為替相場が購買力平価から大きくかけ離れている場合は、長期的には購買力平価の水準に収束していくと考えられている。
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「為替操作にはまったくあたらない」。麻生財務相は25日の記者会見で、安倍晋三政権が円安誘導しているとの海外からの批判に反論した。足元の円相場は「円高修正の動き」と強調。もう一段の円安水準を政府が容認しているとの見方が市場で広がった。
■強気の財務相
24日にはドイツのメルケル首相が円安傾向に懸念を表明。2月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を控え、ロシアの当局者も「通貨戦争」という表現まで使って円安に不満を示していた。
強気の麻生発言に「米国がいまの円安・ドル高を容認している可能性がある」(外国銀行)との観測も浮上した。実際、米国で為替政策を担当する米財務省からは、いまのところ円安批判は表だって聞かれない。
「日本がついに量的緩和に政策転換した」。25日の東京市場では、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に参加している著名投資家のジョージ・ソロス氏が安倍政権の経済政策を評価する発言をしたと伝わったことも、投機筋の円売りに拍車をかけた。
市場関係者が注目するのは大胆な金融緩和と財政出動を柱とする安倍政権の政策だけではない。最近の円安の底流には、日本の貿易収支の構造変化もある。燃料輸入の高止まりなどから、2012年の貿易赤字が過去最大になったことに注目する向きは多い。
貿易赤字が定着し、輸出で稼いだ外貨を売って円を買うよりも、輸入代金の支払いのために円を売る方が大きい。みずほコーポレート銀行の唐鎌大輔マーケット・エコノミストは「アベノミクスが始まる前から、円相場は構造的な円安局面に入っていた」と指摘する。
国際通貨研究所が企業物価指数からはじいた昨年9月時点の購買力平価では、円相場の水準は95円台半ば。日本経済研究センターの岩田一政理事長も、購買力平価など各種の指標からみると、円相場は95円程度でようやく均衡水準と分析する。円安方向への修正余地がまだあるとの見方だ。
■売越額は高水準
投機筋の動向を示すシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物取引の非商業部門をみると、直近1月15日時点の円の対ドルでの売越額は8216億円と、08年のリーマン・ショック後では最も高い水準にある。
だが、1ドル=110~120円台で推移していた06年から07年にかけての売越額は2兆円前後に膨らんでいた。市場関係者の間では「投機筋には円売り余力がまだある」との見方が多い。
円安は燃料など輸入物価の上昇を通じて、中小企業や農家には負担増になることが多い。このため岡村正・日本商工会議所会頭や石破茂・自民党幹事長は85~90円が適正水準との認識を示しているが、市場では想定レンジを90~95円に切り下げる動きが出ている。
購買力平価 国は違っても同じモノやサービスの価格は一つであるという「一物一価の法則」が成り立つ時の為替相場の水準のこと。例えば、ハンバーガー1個の値段が米国で1ドル、日本で100円の場合は、1ドル=100円に落ち着くはずだとの考え方が基になっている。購買力平価は為替相場の適正水準を示す物差しの一つとされ、消費者物価指数や企業物価指数から算出する。実際の為替相場が購買力平価から大きくかけ離れている場合は、長期的には購買力平価の水準に収束していくと考えられている。
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