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発送電分離、新規参入促す 広域融通も容易に

2012年07月14日 08時12分41秒 | 経済
 経済産業省の電力システム改革専門委員会は13日、電力会社の発電事業と送配電事業をわける「発送電分離」の方向性を打ち出した。電力会社以外の事業者に使いやすい送配電網を日本全域で整え、事業者間の競争を後押しする。地域間での電気の融通もしやすくなる。ただ分離方法の最終決定は年末に先送りし、制度設計への詰めを残している。




 専門委は新たな分離方法として3案を検討してきた。「機能分離」と「法的分離」と「所有分離」の3つだ。このうち発電と送配電を手掛ける事業者を完全に切り離す所有分離には、電力各社が強く反発。電力会社は保有する送電線網も担保に社債を発行しており、送電線網を電力会社から切り離せば、問題が社債にも波及する。このため専門委も所有分離は「将来的検討課題」として事実上除外した。

■2案とも課題

 残した2案のうち、機能分離は電力会社の組織をいじらずに、送配電網の管理を外部の独立した系統運用機関に委託する仕組みだ。中立性や運営の透明性が高まると期待できる半面、システムを移すコストがかさむ。

 一方、法的分離は電力会社を持ち株会社にして傘下に送配電会社を置く。発電、送電、小売りなど部門ごとに会計も区分する。ただ、部門間でコストをつけ替える余地は残る。分社化はさほどコストはかからないが、時間がかかる可能性が高い。系統運用機関には電力会社の供給区域間をつなぐ連系線の管理だけ委託する。

 両案とも課題を残すとはいえ、発送電分離で生まれるメリットは小さくない。

■再生エネに弾み

 電力会社以外の発電事業者にも利用しやすい送配電網ができ、新規参入を後押しできる。太陽光など再生可能エネルギーの導入にも弾みがつくなど競争が進む。発送電分離は家庭向けも含めた電力の自由化を進める大前提でもある。事業者間の競争は電気料金の水準を抑える効果も期待できる。
 欧米では1980年代から発送電分離が進む。欧州各国は96年の欧州連合(EU)指令に基づき、電力市場の自由化を進めている。自由化に際し、発送電を手掛ける会社が新規参入を妨害しないよう、発送電の分離を義務付けた。仏電力(EDF)は送電と配電部門をそれぞれ子会社化し、独大手電力のイーオンは送電部門を売却するなど構造分離が進む。米国では発送電分離は各州の判断に委ねている。

 発送電分離に併せ、連系線をより強く太くするので、地域間の電気の融通がスムーズに進む可能性もある。東日本大震災では余力のある西日本から東日本へスムーズに融通できなかったが、有事の電力需給が安定する効果は大きい。

 中長期的なシステム改革を進める前に、足元の電力需給を安定させる必要もある。国内に50基ある原子力発電所は今、関西電力大飯原発3号機がフル稼働しているだけで、国内の電力需給には不安が生じている。原子力安全行政を一元化する原子力規制委員会の設置にもなお時間がかかる見通しだ。

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