サムスン電子グループに現地採用された外国人の離職が、相次いでいるという。スマートフォン(高機能携帯電話)に続く付加価値の高い次世代主力製品がなかなか見つからず、世界トップから転落した日本の家電・電機メーカーと同じ道をたどるのではないかとの危機感が強まっているためだ。一方で、日本人技術者は、同グループの問題点を承知しつつも、日本企業の「弱さ」に失望しているケースが多いという。
サムスン電子グループと関係の深い中央日報は今年2月、同じグループ内で携帯電話や薄型テレビ、半導体の世界市場でトップシェアを争うサムスン電子とそれ以外の系列会社の業績格差が広がり成長が停滞していると報じた。
昨年の約201兆ウォン(約16兆7835億円)のグループ売上高のうち、サムスン電子の占める割合は約56%(推定)。また、同紙によれば、サムスン電子の今年第1四半期の営業利益は8兆7800億ウォンで、うち74%はスマートフォンなど電子の無線事業部門が貢献したという。
一極依存へ危機感
こうした中で、サムスン電子は以前からスマホへの一極依存に危機感を強めていたが、6月7日、危機の兆候がよりはっきり表れる事態が起きた。
海外の投資銀行が、サムスン電子のスマホ「ギャラクシーS4」の販売見通しを悲観的にとらえるリポートを発表。同社の株価は前日比6.2%下落し、1日で15兆2千億ウォンの時価総額資産が失われたのだ。
サムスン電子は2011年にソフトウエア、デザイン、サービスの強化を打ち出し、ソフト開発などに関連する人材獲得に力を入れた。この結果、新規に獲得した人材は、海外の現地採用者を中心に約3万2千人に達するという。
ところが今、この人材から離職者が相次いでいる。
中央日報によると、(1)連続する夜勤や業務のプレッシャー(2)上司の命令に服従を求められる韓国企業特有の「しごき」(3)過程より成果中心の異質な企業文化への不適応-などが背景にあるが、もっと深刻な問題は、次世代分野への移行の停滞だ。
強みの「即決」陰り
サムスン電子は、発光ダイオード(LED)、太陽光事業、コンピューター断層撮影装置(CT)を含む最先端医療機器、バイオテクノロジーによる医薬品開発への資本投下を加速させてきたが、どの分野も苦戦している。
「即決が強みだったヒト、モノ、カネの選択と集中にためらいが出ている」(サムスン元役員)というのがその理由だ。
中央日報は「円安を武器に復活する『日本株式会社』、韓国の先端技術を猛追する中国に対し、(サムスン電子は)内外の経済情勢の不確実性の中で方向を失い、漂流している」とする経済専門家の見方を引用している。
しかし、サムスンで働く日本人技術者の多くは、サムスンよりも、古巣の日本の産業界の危機の方が深刻だとみている。
ヘッドハンティングされ4年以上がたつ40代前半の技術者は「日本メーカーは、製品を相手が求める技術と価格水準に落とし込んだり、納品数と納期を要望に合わせる努力が足りなかった」と振り返る。
「サムスンならば取引先が半導体を月に1千万個入れろと言ってきたらチャンスととらえ、シェアを奪うために製造ラインを大幅に入れ替えるリスクを即決で取る」(同)
別の技術者も、「タッチパネルの素材の有機EL(エレクトロルミネッセンス)など、基礎研究で日本が先行した技術分野も、日本がもたついている間にサムスンに引き離された」と明かす。
日本人技術者の多くは、サムスンに引き抜かれる際に戸惑うものの、実際に見学してその優位性を認識する。それでも、転職直後は、いずれ日本に戻って日の丸再生をしようと願うが、日本のメーカーの体質を知り、「将来がない」と失望するのだという。(ソウル 加藤達也)
サムスン電子グループと関係の深い中央日報は今年2月、同じグループ内で携帯電話や薄型テレビ、半導体の世界市場でトップシェアを争うサムスン電子とそれ以外の系列会社の業績格差が広がり成長が停滞していると報じた。
昨年の約201兆ウォン(約16兆7835億円)のグループ売上高のうち、サムスン電子の占める割合は約56%(推定)。また、同紙によれば、サムスン電子の今年第1四半期の営業利益は8兆7800億ウォンで、うち74%はスマートフォンなど電子の無線事業部門が貢献したという。
一極依存へ危機感
こうした中で、サムスン電子は以前からスマホへの一極依存に危機感を強めていたが、6月7日、危機の兆候がよりはっきり表れる事態が起きた。
海外の投資銀行が、サムスン電子のスマホ「ギャラクシーS4」の販売見通しを悲観的にとらえるリポートを発表。同社の株価は前日比6.2%下落し、1日で15兆2千億ウォンの時価総額資産が失われたのだ。
サムスン電子は2011年にソフトウエア、デザイン、サービスの強化を打ち出し、ソフト開発などに関連する人材獲得に力を入れた。この結果、新規に獲得した人材は、海外の現地採用者を中心に約3万2千人に達するという。
ところが今、この人材から離職者が相次いでいる。
中央日報によると、(1)連続する夜勤や業務のプレッシャー(2)上司の命令に服従を求められる韓国企業特有の「しごき」(3)過程より成果中心の異質な企業文化への不適応-などが背景にあるが、もっと深刻な問題は、次世代分野への移行の停滞だ。
強みの「即決」陰り
サムスン電子は、発光ダイオード(LED)、太陽光事業、コンピューター断層撮影装置(CT)を含む最先端医療機器、バイオテクノロジーによる医薬品開発への資本投下を加速させてきたが、どの分野も苦戦している。
「即決が強みだったヒト、モノ、カネの選択と集中にためらいが出ている」(サムスン元役員)というのがその理由だ。
中央日報は「円安を武器に復活する『日本株式会社』、韓国の先端技術を猛追する中国に対し、(サムスン電子は)内外の経済情勢の不確実性の中で方向を失い、漂流している」とする経済専門家の見方を引用している。
しかし、サムスンで働く日本人技術者の多くは、サムスンよりも、古巣の日本の産業界の危機の方が深刻だとみている。
ヘッドハンティングされ4年以上がたつ40代前半の技術者は「日本メーカーは、製品を相手が求める技術と価格水準に落とし込んだり、納品数と納期を要望に合わせる努力が足りなかった」と振り返る。
「サムスンならば取引先が半導体を月に1千万個入れろと言ってきたらチャンスととらえ、シェアを奪うために製造ラインを大幅に入れ替えるリスクを即決で取る」(同)
別の技術者も、「タッチパネルの素材の有機EL(エレクトロルミネッセンス)など、基礎研究で日本が先行した技術分野も、日本がもたついている間にサムスンに引き離された」と明かす。
日本人技術者の多くは、サムスンに引き抜かれる際に戸惑うものの、実際に見学してその優位性を認識する。それでも、転職直後は、いずれ日本に戻って日の丸再生をしようと願うが、日本のメーカーの体質を知り、「将来がない」と失望するのだという。(ソウル 加藤達也)
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