心の風景 認知的体験

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認知的体験
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ヒューマンエラー、安全
ポジティブマインド
大学教育
老人心理

今度は、歯医者通い

2019-06-14 | 心理学辞典
ここしばらく、薬もらいにクリニックに行くだけで、
るんるん生活を楽しんでいた。
でも罰があたったようだ。

ずっと昔に治療してかぶせてあったっものがとれてしまった。
昼食ときにとれて、すぐにかかりつけ歯医者に電話したら16時ならというので
あるいて15分の医院にいって、
とりあえずの処置をしてもらった。

医者はいやだが、助かる。
次は7月1日になる。

ちなみに、およそ1800棟弱からなる団地には、歯科医院が2か所ある。
内科専門の看板を掲げているが、
診療している気配のない医院も1つ。
かなり繁盛している耳鼻科、皮膚科の医院もある。

でも、スーパーは撤退してしまった。




毎日、早出残業に心も体もついていけません]お仕事クリニック

2019-06-14 | 教育
毎日、早出残業に心も体もついていけません

相談者:生命保険会社営業/30歳/女性

悩み@@
私は生命保険会社で営業を5年ほどやっています。
生命保険の営業は大変です。朝早くから営業所に出勤し、その日の訪問先の資料を作成・収集しお客様を訪問。営業所に戻ると、翌日以降の訪問先に向け電話を入れたり、上司への報告資料を作成したり…。ふと時間を見ると、自分だけが営業所に残って残業していたなんていうことも少なくはありません。それでも、翌朝はまた早くから出勤しなくてはなりません。時には、お客様からいきなり呼びだされることもありました。突然の訃報で、保険金の支払いに向けた手続き等です。
営業職といっても、単にモノを売り歩くのではなく、保険という商品は、人と人とをつなぐもの。それゆえに、様々なことをしなくてはならない仕事なのです。
比較的体力があった時は、それでもどうにかこなせていたように思いますが、最近では、極端に疲れ果ててしまうこともしばしばです。仕事は嫌いではないのですが、体がついていけないような気がしています。
私よりも年齢が上の方も多数いるのですが、どのようにされているのかよくわからないのが実情です。どうすればいいのでしょうか?
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● うつ病コースまっしぐらです
 5年間、たぶん、夢中でお仕事に打ち込んでこられたのだと思います。その結果としての心身、とりわけ心の疲れが出てきているのだと思います。
 体がついていけないのではなく、心がついていけないという状態です。
 このままの状態を続けるのは、極めて危険です。うつ病コースまっしぐらだからです。

●完璧主義の罠
何事も完璧にやろうと思えば際限がありません。でもそうしないと気がすまない人がいます。完璧主義者と呼ばれる方々です。あなたもその一人と推察します。こういう方々が仕事の質を高めているのですから、会社や顧客にとってはこれほどありがたいことはないのですが、しかし、完璧に仕事をする(せねばと思う)当人にとっては、厳しいものがあります。
とりわけ、あなたのお仕事のように、人相手の仕事の世界で、完璧主義者的なやり方をしようとすると、他の人なら手を抜く、あるいは気がつかないことも完璧にやろうとします。顧客はきまぐれですから、その気まぐれにあなたが完璧に対応しようとすると、仕事が増える(増やしてしまう)ことなります。ストレスもどんどんたまります。「体がついていけないような気」は、「体」ではなく「心」にストレスがたまり頂点に達しているシグナルです。

● いくつかの処方箋
「短期的処方箋」
① 勤務時間を厳守する(残業はしない)
あれもこれも完璧にやろうとすれば時間がいくらあっても足りません。早出残業続きになってしまいます。しかし、まずは、外側から働きに制約を課してみることをおすすめします。そんなこといっても仕事が終わらないのに、という不安をふっきる決断が必要です。
とりあえず、週2日、曜日限定の残業なしディーは無理ですか。有給休暇も最大限に活用してみるようにしてください。心の危険ゾーンに入っていることをしっかり認識してください。
② 案件の優先順位をつける
勤務時間厳守の制約を受け入れれば、当然、何を優先的にやるべきかを考えざるをえません。大事なことから片をつけていくようにするのです。あとまわしにしても、あるいは、時にはほっておいてもあまり問題が起こらない(解決してしまう)ものが見えてくるはずです。
③ 一人ですべてをやろうとしない(お互いさまの仕事友達を作る)
職場の雰囲気は競争的なのでしょうか。あるいは、孤立しているのでしょうか。もし仲間を作れる雰囲気があれば、仕事を少しでも分け合うようにできませんか。というより、まずは、あなたが周りの方々の仕事を少し助けてあげるように心がけてみたらどうでしょうか。それがお互いさま意識となり、あなたの急場を助けてくれるものにもなると思います。
④ ストレス管理についての知識を仕入れる
ネット上にたくさんあります。参考になるものもあるはずです。知は力です。「ストレス」以外に、「感情労働」「燃え尽き症候群」「うつ傾向」などをキーワードにして検索して、知識を豊富にして、その中からあなたに有効なものを実践してみてください。
「中長期的処方箋」
① 生活を楽しむほうに軸足を移す
仕事一筋の5年間。自分をほめてやるためのあれこれを考えてみたらいかがですか。高額の買い物をしたり、海外旅行などをするのです。あるいは、親孝行をする、友人との付き合いをもっと活発にするのです。生活を楽しむほうに時間とお金を使うようにしたらどうでしょうか。
② 将来、どうしたいのかを考えてみて、その方向に少しずつ動いてみる
今にとらわれないで、5年、10年先の自分設計をしてみてください。日常
的な仕事の多忙さに追われて、自分が見えなくなっているようなところはありませんか。未来から今の自分を見つめ直してみると、今のそのがんばりの意味が見えてくることもあるように思います。そして、その方向に少しでも動き出してみたらどうでしょうか。


わかる力をつけるための7つの原則

2019-06-14 | わかりやすい表現

わかる力をつけるための7つの原則

・わかりたいと思う
・関係づける
・たとえてみる
・例を見つける
・使ってみる

・わからないものを常に頭に抱えておく
・わかるための道具を有効活用する

コーヒーがあとあとまで残る

2019-06-14 | 心の体験的日記
もともと珈琲はそれほど好きではなかった。
まっとうな?コーヒーを飲むと、眠れなくもなった。

それでも、朝一の薄い珈琲は、欠かさず飲んでいる。
いつ頃からか、その珈琲が口なのか胃なのか、
一日中、残っている感じなのだ。
あまり気持ちよくない。

ちなみに、値段は奮発してひとビン千円くらいのものなので?
質のほうは問題ないと思っているのだが。

2000万円騒動、おもしろいねー、でもねー

2019-06-14 | 社会
こんな騒動にまで展開するとはねー

前記事で、予測結果を読み取るリテラシーの話を書いた。
だんだん、それを支援するような情報に目が行くようになったのは、好ましい。

ところが、もっとおもしろいほうへ話が発展してきた。
審議会答申を受け取らないというのだ。
政治家の世論戦略として、これまた興味津々。
さらに、
これを契機に年金制度の将来について議論しようという王道的な提案も出てきた。

安倍総理のイラン無駄旅行の話よりずっとおもしろいが。
でもなー、なんだかなー




ユーモア」10年前の今日の記事

2019-06-14 | ポジティブ心理学
ユーモアをTPOに応じて発するのは大変な力量がいる
まずは、語彙が豊富でないとだめ
気持ちゆとりがないとだめ
そして、相手より心理的に上という意識がないとだめ
さらに、
知的であること
触発的であること

ユーモア
それは、知的格闘技なのだ

「認知心理学の潮流」(昔の原稿)

2019-06-14 | 心の体験的日記

「認知心理学の潮流」

第1 認知心理学と認知科学

 認知科学は、「機械(コンピュータ)、動物、人の知の世界を包括的に研究する科学」である。とりあえずは、既存の学問が寄せ集まった新たな学際的な研究領域を形成することになったが、その中でも、認知心理学は、言語学とともに認知科学の主要な一分野として、もっぱら人の知に焦点を当てて研究をしてきた。

図1—1 認知諸科学の結びつき
 
 認知科学が誕生したとされるアメリカ・MITでのシンポジウムが開催された1956年9月以来、認知科学と認知心理学とはお互いに強く影響しあいながら、半世紀余にわたり、知の研究をおこなってきた。したがって、本章で認知心理学の潮流を考えるに当たり、認知科学のそれとをだぶらせながら、論じていくことになる。
 なお、研究対象に加えて両者の違いは、方法論にあることも、ここであらかじめ指摘しておく。
 認知科学は、コンピュータ上で実装、ないしはシミュレーションできる論理・計算モデルの構築を志向するのに対して、認知心理学は、経験データに基づいた現象の記述と説明モデルの構築を志向する。
    
第2 1956年の認知科学
   誕生への地ならし

 認知科学が生み出された直接のきっかけは、1937年のABCコンピュータの開発である。コンピュータがみせる知的機能の可能性に対して、既存の諸学問が注目し寄り集まって認知科学と呼ばれる新たな学問領域が作り出されたのである。
 その中で生まれたのが、認知心理学である。それは、本章で紹介するような「新生」認知心理学と呼ぶにふさわしい新たな研究パラダイムのもとでの知見が蓄積されることになるが、そこに至るまでにも、地ならし的な役割を果たしてきた心理学の歴史がある。
 「新生」認知心理学の本題に入る前に、そうした心理学を、方法論と知見とに分けて点描しておく。

2.1 方法論的な地ならし
 方法論的な地ならしとしてまず最初に挙げておくべき心理学は、近代心理学の祖・W.ブント、(Wundt;1832-1920)およびその後継者・E.B.ティッチナー(Titchener;1867-1927)の内観心理学であろう。心の中をのぞき込むこと(内観)で得られたデータから心理学を構築しようと試みたが、これは、新生認知心理学の一つの有力な技法として使われることになるプロトコル分析(発話思考法)誕生への地ならしとなっているからである。
 しかしながら、20世紀前半の心理学は、内観心理学からは大きく軌道修正することになる。
I. パブロフ(Pavlov;1849-1936)の条件づけの研究に触発された、J.B.ワトソン(1878-1958)による「急進的」行動主義が時代の潮流を形成することになってくるからである。
 内観を排除し、観察可能な刺激(S)と反応(R)との関係を定めることにだけ心理学の方法論を厳しく限定することで、心理学を自然科学なみの科学にしようと試みた。この流れは、B.F.スキナー(1904-1990)にまで続くが、その間1930年代に、新行動主義への動きがあり、それが、新生認知心理学への方法論的な基盤を提供することになる。
 その一人がE.C.トールマン(Tolman;1886-1959)である。彼は、生体に内在する目的志向性に着眼して、それを達成するための手段ー目的関係からなる認知地図が頭の中にできあがることをもって学習の成立とする認知論的な概念を提唱した。
 また、C.L.ハル(Hull;1884-1952)は、刺激と行動の間をつなぐ媒介変数を仮定し、それらを駆使した仮説演繹的モデル構築の方法論を提案した、
 両者ともに、S-R関係だけに限定する急進的な行動主義心理学の限界に気づいて、S−「O」ーR関係を措定することで、「心のある」心理学の構築をめざした。これは、まぎれもなく、新生認知心理学のパラダイムそのものでもあった。

2.2 認知研究の灯火を掲げ続けてきた心理学者
 行動主義全盛の中にあっても、認知研究の灯火を掲げていた心理学者がいた。活躍した時期の順番に簡単にその功績を眺めておく。
「S.フロイト(Freud;1856-1939)の精神分析」
 フロイトの精神分析は、情意領域にかかわる理論と臨床実践の学であるが、認知心理学にも陰に陽に影響を与えている。
 たとえば、不快な記憶は抑圧されるとする記憶の抑圧説は、日常記憶研究では品を変え形を変えて取り上げられている。あるいは、意識・前意識・無意識からなる心の3層モデルは、そのまま認知領域のモデルとしても使われている。
「ゲシュタルト心理学」
 ブントとフロイトが、因果関係の定立を追及する自然科学を強く意識した心理学の構築をめざしたのに対して、20世紀初頭に生まれたゲシュタルト心理学は、実験室の中で起こす心的現象や行為そのものの中に観察できる特性の分析をおこなうという実験現象学的方法を駆使して多くの興味深い現象を発見した。
 その分析の観点として提案した「全体は部分の総和以上のもの」とするゲシュタルト原理は、自然科学における支配的な原理である「分析による統合」原理とは違った原理による心の世界の特性を示した点で画期的であった。
 さらに、ゲシュタルト心理学者・W.ケーラー(Kohler;1881-1967)は、心脳同型説(isomorphism)を提案し、心にかかわる現象のゲシュタルト性と同型なものが脳にもあるとして、心的現象の脳基盤にも関心を向けた点は、認知脳科学の先鞭をつけたものとして忘れることはできない。
「F.バートレット(Bartlett;1886-1979)」
 他と比較するとその業績はやや限定的ではあるが、バートレットも忘れることはできない。彼は、新生認知心理学のキーワードともなるスキーマ(図式)を使って記憶の変容を説明しようと試みたからである(1932)。
「J.ピアジェ(Piage;1896-1980)の認知発達心理学」
 フロイトが提案する情意領域の発達段階説とともによく知られているのが、ピアジェの認知発達の段階説である。1955年には「発生的認識論研究所」を設立して、子どもの認知発達を、学問の進化の歴史になぞらえて考える壮大な構想を提唱した。子どもの行動を観察することを通して、その背後にある認知の世界の特質を解き明かしてみせた功績は大きい。

第3 表象、記号計算、汎用人工知能
 
 見出しに使った3つの用語は、認知科学の初期段階(60年代、70年代)を特徴づけるキーワードである。コンピュータの知的機能を記号システムの論理・計算処理とみなし、人間の知的機能をどこまでコンピュータ上で実現できるか、すなわち汎用人工知能(AI; Artificial Intelligence)の可能性を模索することから、認知科学の研究が始まったのである(たとえば、Newell and SimonによるLogic Theorist(1956),一般問題解決器の開発(1960年代))。
 しかし、心理学の側には、前述したような地ならし的なものはあったものの、行動主義全盛の中にあったため、こうした認知科学のねらいに直接役立つ知見は貧弱だった。ただ、次の3人の仕事は、認知科学に触発されて急速に展開される認知心理学の土台となった。
・ブロードベントによる(Broadbent)注意に関する情報処理モデル(1954)
・ミラー(Miller)の短期記憶容量に関する魔法の数7をめぐる
 論文(1956)
・ブルーナーら(Bruner)の概念達成における認知方略の研
 究 (1956)。
60年代は、これらを踏まえて、人間の知的機能をコンピュータのそれになぞらえて考えていこうとする情報処理論的パラダイムに従った研究がおこなわれるようになった。包括的な枠組の提案は、1967年になるが、3つの画期的な研究が60年代前半におこなわれている。
 一つは、ミラーの研究の流れを受け継いだスパーリング(Sperling、1960) の研究である。視覚的な情報の瞬間的な貯蔵が魔法の数7をはるかに越えることを部分報告法を使って明らかにした。
 2つは、スタンバーグ(Sternberg,S. 1966)の研究である。記憶情報の検索が系列悉皆的であることを、巧みな実験で実証した。
3つは、ブロードベントの注意研究を踏まえて行われたトリースマン(Treisman、1964) の注意研究である。両耳分離聴という方法を使っていくつかの興味深い注意現象とモデルを提案した。
 こうした研究は、1967年の発刊されたナイサー(Neisser)の著作「認知心理学」と、1968年に提案されたアトキンソンとシフリン(Atkinson and Shiffrin)の3貯蔵庫モデル(図2)の中に取り込まれて、人間の知的機能を、情報処理論的に解明していく試みへの里程標となった。

図2 人間の記憶システム

 70年代は、情報処理論的パラダイムに従った研究が盛大におこなわれた。ここでの研究は、認知科学から投げかけられたもう一つの問題に取り組んだものが多いのが特徴である。
 それは、人間の知識表象にかかわる問題である。
 人工知能を実現するためには、コンピュータの中になんらかの知識表象を埋め込まなければならない。そのためのモデル(表現形式)が開発され、それが人間の知識表象のモデルにもなりうるかどうか(心理的実在)の検証が求められたのである。
 たとえば、そのはしりとなった研究を一つ挙げれば、コリンズとキリアン(Collins and Quillian, 1969)の研究がある。知識表象の表現モデルとして、階層的意味ネットワークを仮定し、知識要素の検索時間が、そのネットワークでのノード間の距離に比例することを示した。
 人工知能に実装されたやや大きな知識単位のものとしては、スクリプト(R.C.Schank & R.P.Abelson 1977)、フレーム(M.Minsky;1975)が 知られている。
 これらの研究は、知識表象の表現の心理的実在性の論議を越えて、情報処理の中でそれらがどのように運用されるか(知識運用論)にまで発展して、バートレットのスキーマ理論の復活という形で、認知心理学の支配的な理論となり、アンダーソン(Anderson 、1983 )のACT*(Active Control of Thought)という包括的なモデルへと収斂していった。
 このモデルでは、ネットワーク表現される宣言的知識と、条件照合と実行(If-then)の連鎖(プロダクション・システム)で表現される手続的知識とによって支えられる作業記憶での情報処理として人間の認知活動を包括的にシミュレーションすることに成功している。(なお、1997年には、ACT-Rへとバージョンアップされている。)

図3  ACT* の概要

第4 領域固有性、状況 行動
   型ロボット
 
 見出しの3つの用語は、認知科学、認知心理学の成熟期1980年代のキーワードである。
1970年代情報処理パラダイム全盛の中でも、人間の認知には、計算合理性ではとらえることのできない世界があることを示す研究が心理学者の側から散発的にではあるが、提出されるようになってきた。 その一つは、思考の領域固有性である。論理的にはまったく同じ課題であっても、問題の表現を慣れ親しんだ日常的な場面に移すと正解できるようになる現象である。もっぱら、ウエイソンとジョンソンーレアード(Wason & Johnson-Laird 、1972)の4枚カード問題をめぐって一連の研究がおこなわれた。
 領域固有性は、その後、認知エキスパート研究においても広く認められるようになり、領域普遍な計算合理性を基本テーゼとしておこなわれてきた初期認知科学への強烈な一撃となった。

図4 知識の領域固有性と転移

 1980年代になると、カーネマンとツバルスキー(Kahneman & Tversky1982)による社会的判断における固有のバイアス(ヒューリスティックス)の研究成果が公表されるようになると、この流れは勢いを増し、認知心理学の新たなパラダイムとして、状況的認知論を形成するまでになった。レイブとウエンガー( Lave &Wenger,1991)の認知エキスパートに関する仕事は、その集大成とも言えるものである。
 状況的認知論では、人間の認知を頭の外とのやりとりで捉え直す動きを作り出し、それは、必然的に、実験室的な認知から日常的な認知へと関心を向けさせることにもなった(たとえば、Neiser、 1982 )。
また、シンボル・ベースのAI研究も、想定される知識のすべてをコンピュータに記憶させることの困難さ(フレーム問題)に直面して身動きができなくなってしまった。
 こうした動きに呼応するかのごとく、ブルックス(B rooks、1986)が サブサンプション(包摂; subsumption)・アーキテクチャーと呼ばれる設計思想に基づいた行動型AIを開発した。センサーで駆動される複数のエージェント間の実行の優先順位に従って環境中を適応的に動き回る昆虫のようなロボットが開発されたのである。
 一方、1980年代中頃、もう一つの注目すべき動きが出てきた。それは、ラメルハートとマクレランド(Rumelhart and McClelland、1986)にはじまる並列分散処理PDP;Parallel Distributed Proccessing)モデルである。さまざまな認知機能を脳の神経結合ネットワークモデルとしてコンピュータ上で実現する、まったく新たな試みが、さまざまな認知機能について爆発的におこなわれた。

第5 認知心理学の新たな展開
 
 これまでのように1990年代の認知科学、認知心理学を特徴づけるキーワードを挙げるとすれば、身体、進化、脳神経、ヒューマノイドの4つとなろう。これまでは、3つで済んだが、ここにきて4つになったのは、認知心理学を1つに束ねるグランドセオリーがなくなり、研究のテーマも方法論も拡散傾向にあることを反映している。
状況的認知論の発展として、状況と頭の中の知識世界とのインタフェースとしての身体の役割への関心も高まり、それほど大きくはないが強い流れとして、アフォーダンス理論(たとえば、その実用的な意義を指摘することで、この概念を広めたNorman,1988)、あるいは、活動理論( Engstrom,1987)として新たな展開をみせている。1999年には、プファイファーとシェイヤー( Pfeifer & Scheier)によって身体性認知科学(
(embodied cognitive psychology)なる大著も出版された。
 さらに、出自は比較心理学であるが、心理学全体に影響力を与え始めた進化心理学も認知進化心理学として一つの領域を形成しつつある。その端緒になったのが、コスミデス(Cosmides,1989)による裏切者検知モジュールに関する実験である。進化(適応)の妨げになる存在への感受性が、論理的な判断課題(4枚カード問題)の解決においてさえ発揮されることを示した。
 また、fMRI、PETなどの非侵襲の脳計測技術の進歩によって、認知活動と脳神経機能との対応がオンラインで計測できるようになり、一気に研究が加速された。
 そして、人工知能研究も、その最終の目標である鉄腕アトム型の製作の第一段階とも言えるヒューマノイド(人間の形をした)・ロボットの原型(ホンダのASIMO、2000)など、現在でも進化を続けている。
 
参考文献
H.Gardner 1985 The Mind New Science  (佐伯胖ら監訳1987「認知革命--知の科学の誕生と展開--」産業図書)
今田恵 1962 「心理学史」 岩波書店

引用文献
1)Atkinson,R.L.,and Shiffrin,R.M. 1968 Human Memory; A Proposed System and Its Control Processes. In K.W. Spence and J.T. Spence(eds.) The Psychology of Learning and Motivation; Advances in Research and Theory,vol 2,New York; Academic Press
2)Anderson ,J.R. 1983 The Architecture of Cognition Cambridge Mass; Harvard University Press.
3)Bartlett,F.C.1932 Remembering. Cambridge University Press(宇津木保ら訳 「記憶について」誠信書房)
4)Broadbent,D.E. 1954  The role of auditory localization in attention and memory space. Journal of Experimental Psychology,47,191-196
5)B rooks、R.A.(1986) A robust layered control system for a mobile robot. IEEE Journal of Robotics and Automation. RA-2.14-23
6)Bruner,J.S ,Goodnow,J. and Austin,G. 1956 A Study of Thinking. New York;John Wiley(岸本弘ら訳 1974「思考の研究」明治図書)
7)Collins,A.M.& Quillian,M.R. 1969 Retrieval time from semantic memory. Journal of Verval Learning and Verbal Behavior,8,240-247
8)Cosmides,L. 1989 The logic of social exchange ; Has natural selection shaped how humans reason? Studies with the Wason selection task. Cognition.31,187-276
9)Engstrom,Y. 1987 Learning by Expanding. Helsinki;Orienta-Konsultit Oy( 山住勝広ら訳1999「拡張による学習」新曜社 )
10)Lave,J. and Wenger,E. 1991 Situated Learning;Legitimate Peripheral Participation. Cambridge,UK;Cambridge University Press(佐伯胖訳 1993 「状況に埋め込まれた学習ー正統的周辺参加」産業図書)
11)Miller,G.A 1956 The magical number seven,plus or minus two; Limits on our capacity for processing information. Psychological Review,63,81-97
12)Minsky;M1975 A framework for representing knowledge. In P.Winston(ed.) The Psychology of Computer Vision. New York;McGraw-Hill(白井良明・杉原厚吉訳 1979「コンピュータービジョンの心理」産業図書)
13)Neisser,U 1967 「Cognitive Psychology」 New York;Appleton-Century-Crofuts(大羽稔1981「認知心理学」誠信書房)
14)Neiser,U. (ed) 1982 Memory Observed; Remenbering in Natural Coxtexts .W.H.Freeman and Company,San Francisco and Oxford (富田達彦訳1988「観察された記憶 自然文脈での想起」 誠信書房)
15)Norman,D.1988 The Psychology of Everday Things. Basic Books(野島久雄訳 1990 「誰のためのデザイン?」 新曜社)
16)Pfeifer,R. & Scheier,C. 1999  Understanding Intelligence
MIT press(石黒章夫ら監訳 2001「知の創成---身体性認知科学への招待」共立出版)
17)Rumelhart,D.E.&J.McClelland(
Eds.)Parallel Distriibuted Processing. Cambridge;MIT Press/Bradford Books
18)Sternberg,S. 1966 High-speed scanning in momory. Science,153,652-654
19)Schank,R.C. & R.P.Abelson 1977 Scripts,Plans,Goals and Understanding; Inquiry into Human Knowledge Structures. Lawrence Erlbaum,
20)Treisman、A.M. 1964 Selective attention in man. British Medical Bulletin,20,12-16
21)Wason,P.C. and Johnson-Laird、P.N. 1972 、 The Psychology of Reasoning ; Structure in Content Cambridge,Mass; Harvard University Press.