「集中力を高めるトレーニング」より
6 情報管理を工夫する
雑音は、文字通りの「音」だけではない。自分の頭の中にも「雑音」はある。目の前にある仕事に関係はないが、どうしても気になること、たとえば、恋人のこと、明日の仕事の段取り、上司との人間関係のことなども一種の「雑音」である。また、当面の仕事に関係のない知識、しかし他の時には大事な知識も、その仕事への集中力を妨げる「雑音」である。
たとえば、図に示す絵は、反転図形と呼ばれているものである。そのときどきによって見えが反転するからである。
その時見えているほうを「図」、背景になっているほうを「地」と言う。
図 反転図形の例 別添
「図」のほうに集中している時には、地は「雑音」となる。
こんなたとえから何が雑音かは、ある程度、相対的なものと考えることができることがわかる。つまり、そのときは注意を引いていない、しかしいつかは注意を引く可能性のあるものが、その時の「雑音」となる。その「雑音」が、時には、意味のある「図」に変わる可能性もある。
そこで、大事な情報が図に、当面は関係のない情報が地になるような工夫をすると集中力の妨げにならない。
大事な情報を「図」にするためには、他から孤立させて目立たせればよい。たとえば、本を読む時に重要な部分にアンダーラインを引く、ノートに書き抜く、机の上から仕事に使うもの以外は取り除くなどである。
一方、いかに情報を「有効な地」にするか、これも大事である。それは、「図」を支えるものでもあるし、また、いつかは「図」になるからである。
・新聞の切り抜きをファイルしておく
・ジャンル別に本や資料をまとめて整理しておく
・文献カードを作る
などは、実は意図的に情報を当面「地」化してしまうことに他ならない。
ルービンの杯では、図地反転を意図的にはコントロールできなかった。情報の図地化管理は、自分の工夫でいくらでもコントロールできる。これができれば、周囲からどんなにたくさんの雑情報が舞い込んできてもビクともしないでいられる。