天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

【映画2023】「怪物」@32作目

2023年06月06日 | 映画感想
「怪物」

是枝裕和監督×坂元裕二脚本×坂本龍一音楽、そして今年のカンヌ国際映画祭で本作が脚本賞を受賞されました!おめでとうございました!
あ、もう1つLGBT関連の賞らしいのですが(自分よく知らなかったですすんません)「クィア・パルム賞」というのも受賞されているそーです。重ねておめでとうございました。

あらすじ
息子を愛するシングルマザーや生徒思いの教師、元気な子供たちなどが暮らす、大きな湖のある郊外の町。どこにでもあるような子供同士のけんかが、互いの主張の食い違いから周囲を巻き込み、メディアで取り上げられる。そしてある嵐の朝、子供たちが突然姿を消してしまう。(Yahoo!Movieから丸パク)

ぶっちゃけ、自分あんまり是枝監督作品と相性がよろしくなくて(苦笑)、予告編初見では「んー、まあ時間が合えば観てもいいけど…スルー方向かな」と思っていたのですが、カンヌで賞とか取っちゃうとやっぱりチェックしておきたくなるのが人情というものでしょう!という訳で最近ちょっと忙しいんですが時間作って観てきましたヨ
まあ…自分子供の頃からずーーーーっと坂本龍一ファンですし(人世初のコンサート体験はYMOのJAPAN TOURだった)、それに脚本が坂元裕二氏だというのも鑑賞の決め手になりましたねー彼の作品で「花束みたいな恋をした」が大好きなんですよ!この作品最高だから未見の方は是非レンタルで観て欲しいです!

という訳で本作、
先ずは安藤サクラさん演じる「麦野早織」視点で物語が描かれて行きます。我が子が担任教師にイジメられているらしいと分かってアレコレ手を尽くし、最終的には暴力教師を学校から追い出す事に成功。マスコミもこの件を嗅ぎ付けてセンセーショナルに書き立てて担任教師を追い詰めていく。
その後、この事件を担任教師の視点、それから校長先生の視点、更に麦野早織の息子「湊」とクラスメートの「星川依里」の2人の様子&視点で描いていきます。
何度も何度も時間が巻き戻ってその度に視点が変わり、視点が変わると同じ事件がまるで違った姿に見える、というトリッキーな脚本でした。

本作を観てすっかり忘れていた事を思い出させられた、と言うのかな。

自分には子供がいない事もあって、大人になって随分時間が経ってしまって子供の頃の自分の心の内の事をすっかり忘れてしまっていたんですね。
何となくだけど「子供は純真無垢である」「子供は無邪気である」「子供は真っ直ぐで素直な心を持っている」「子供はなんだかんだで親が大好き、親を信頼している」と思い込んでしまっていた…けど、本作観ながら「んな訳ねーわ自分だって子供の頃親に詰められるとその場しのぎの言い訳に平気でウソつきまくってたわ」「クラスの中にイジメとかあったけど、誰も先生には言わずに見て見ぬ振りしてたよなぁ。ヘタに告げ口すると今度は自分がイジメの対象になるかもしれないしな」って思い出しましたよ。

まーそんなこんなで、本作のメイン子役、「湊」を演じた黒川想矢君と「星川依里」を演じた柊木陽太君の2人がエグい!上手過ぎる!!
この2人の名前は今後も覚えておいてチェックしていかなければならないかもしれない。自分の中で神木隆之介君以来の「神懸かった超絶子役」だった2人共ねっ!あー、思い返してみると是枝監督は柳楽優弥君を発掘した人でもあったなぁ…ナルホド、是枝氏は子役(後の名優)を見出す才能もあるという事か。

さてこの事件、真相は最初のアプローチからはかーなーりー様子が違う訳で、まあ湊の母親が勘違いするのは仕方ないとして、担任教師の「保利道敏」にとっては正に青天の霹靂レベルにイミフな展開が続く訳で。この教師役を演じていた永山瑛太さんは相当表情作るの難しかったんじゃないかなーと思いますよ。
でも、映画冒頭からちょっと意味の分からない小さなエピソード(伏線)が色んな人の視点で描かれて行く内に段々回収されていく中で、あの作文のトリックに気付いた瞬間に保利自身もこの件で自分が見ていた事実をまるで勘違いしていた事に気付いて動き出す→台風のシーンへ続く、という展開はちょっとジーンとしてしまった。
なんかさー、本作ちょっとトリッキー過ぎて分かり難いんだよね(苦笑)、でも気付ければ「ああ、そういう事か!」になるので…まあ観客は子供達視点の物語も後に見るので流石に何がなんだかにはならないと思いますが、途中まで「あれ?ん?どゆこと?」の連続なので…ぶっちゃけちょと疲れる^^;

あのラストシーン…解釈が色々分かれそうな気がしたんですが。
映画冒頭から何度も何度も湊が母親に死んだ父親が生まれ変わったかを聞くシーンが登場するんですよね。コレに何か意味があるのかな?と気になってたんだけど…最後のシーンで子供2人が「生まれ変わった?」「そんな訳ないよ」みたいな会話してましたよね。アレって…そういう事、なんですかね?自分は「ああ、土砂崩れで…」と思ったんですが。
完全に描き切らずにあのシーンで終わっているというのも本作ならではの独特の「余韻」だったのかな、と思います。正に本作自体が観る人の年齢・性別・立場・生い立ち、色んな要素でまるで違うモノとして受け取っている・解釈しているのではないか…ナルホド脚本賞受賞するのも頷ける、トリッキー過ぎるお話でした。
コメント
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