「キリエのうた」
岩井俊二監督×主演は先頃解散した「BiSH」の元メンバー:アイナ・ジ・エンドちゃん×音楽担当を小林武史氏、という超豪華な作品。
他にもアイナちゃんの脇を固めるのは黒木華さん、広瀬すずちゃん、松村北斗君、村上虹郎君…それぞれ主役級のビッグネームがズラリ。他にも江口洋介さんや吉瀬美智子さんら既に大御所感ある世代~お笑い、格闘家、更にアイナちゃんからのミュージシャン繋がり?大塚愛さんや石井竜也さん等々…とにかく「岩井監督の持てる人脈総動員」という感じの豪華な布陣。更には上映時間が178分!だからなげーんだよ3時間弱とかマジやめーや💢
あらすじ
石巻、大阪、帯広、東京を舞台に、歌うことでしか“声”を出せない住所不定の路上ミュージシャン・キリエ、行方のわからなくなった婚約者を捜す青年・夏彦、傷ついた人々に寄り添う小学校教師・フミ、過去と名前を捨ててキリエのマネージャーとなる謎めいた女性・イッコら、降りかかる苦難に翻弄されながら出逢いと別れを繰り返す男女4人の13年間にわたる愛の物語を、切なくもドラマティックに描き出す。(映画.comから抜粋)
先ず、個人的情報として…岩井監督作品があんまり得意な方ではないんですな。←いきなりコレかよ💦
そして本作を鑑賞する人の最も多い層が先頃(2023年6月)解散した超人気バンド「BiSH」のファンの方だろうと思われるのですが、自分はBiSHは勿論知っていますし売れてる曲は何曲か聴いた事もあって知っていますが、正直特に好きでも嫌いでもない…フラットなオーディエンス、という立場だと思います。特にアイナちゃんに思い入れもありません。
本作を観るきっかけとして強いて言えば…広瀬すずちゃんと黒木華さんが好きな役者さんなのでチェックしておきたかった、という位の立ち位置かな。
そんな立ち位置の自分の本作の第一印象はー、「アイナちゃんの楽曲PVを岩井監督Worldでドラマ付与してみた」という感じかな。
岩井監督っぽさ満載のオチのない独特の浮遊感…時系列を敢えていじくり倒している辺りも映画を見慣れている手合いにはそれほど混乱は起こらないとは思いますが、単にBiSHが好きだから映画館に観に来たー♪という方にはなかなか手強い構成だったんじゃなかろうかと思います。
特に本作、主役級の2人(アイナちゃんとすずちゃん)が「ルカ→後にキリエ」「マオリ→後にイッコ」と改名していて(これがまた劇中の会話の中でサラッと説明されているだけなので聞き逃すと致命傷w)、更にアイナちゃんが演じていた「ルカ」が後に名乗っていた「キリエ」というのがルカの実の姉の名前で、回想シーンで登場する姉のキリエ役をアイナちゃんが1人2役で演じているので更に絵ヅラ的に混乱が起き易いというね(苦笑)
で、本作の大ネタが…思いっきりネタバレさせて頂きますが「東北大震災」絡みでして。
この震災に巻き込まれて人生を翻弄させられてしまった若者達、そして震災には直接絡まなかったけれど後にあの震災に翻弄させられた人と関わって行く事になった人達の葛藤や生き様等を見せつつ、主人公の「ルカ/キリエ」の歌の力を随所に散りばめて観客を魅了させよう…的な【ふんわり岩井監督World】な感じですね。えぇ。
アイナ・ジ・エンドちゃんの声は唯一無二だなぁ、と思います。
彼女独特のハスキーでありながらパワーのあるハイトーンと、切なさ演出激盛りなウィスパーボイスの合わせ技で、多分劇中の40%位は彼女の歌うシーンだったんじゃないかと思うんですが、ファンでなくとも惹き込まれる魅力的な歌声だったと思いますね。彼女は本作に出演するに当たって新曲を何作か書き下ろしていらっしゃるそうですが、彼女のオリジナル楽曲の素晴らしさに加え本作では多数のミュージシャンの既存曲をカバーされていて、そのカバーも素晴らしかったと思います。
と、まあ褒めるのはコレくらいにして(え?)
色々モヤる部分が無い事もない。
例えば…一番イラっと来たのは(←いきなりこの書き方ー!)、主人公ルカの姉「キリエ」のキャラな。コレは敢えての岩井監督の演出だと思うんだけど、やたら男に媚びた目線とか口調とか態度とか云々…コレね、女子ウケ一番悪いタイプやでマジで。最初「なっちゃん(松村北斗君)」にすり寄っていくシーンで「ウヘェ~」って思う女子大量発生する可能性大。
更に言えば震災で津波警報が発令されている段階であの行動と…まあ、ルカが心配な気持ちからの行動はまだ百歩譲って許されるものの、あの時のなっちゃんとの電話の会話のネットリ感(病院で自分が妊娠している事を言って欲しい等のくだり)に嫌悪する女子は相当数湧くだろうと想像に難くない。
後、「マオリ/イッコ」が余りにも突拍子もないキャラな件w
多分だけど…帯広で可愛いJKやってた時代に自分の親も祖母も代々「オンナの武器を最大限使って男に媚びて生きて来た」姿を見て嫌悪していたものの、結局自分も東京に出て来たものの途中で親からの援助がなくなるとオンナの武器を使って男をたぶらかして生きていく道を辿っていく…という姿を見せたかったんだろうと思われますが、それにしても余りにもキャラが破天荒過ぎると言うか現実味がなさ過ぎると言うか…ただね、コレに関してはこのマオリ(イッコ)を演じたのが広瀬すずちゃんだというのが自分は良かったと思いましたね。
コレは自分がすずちゃん好きだから~というのも勿論あるんだろうけどさ、いやぁー彼女の存在感の凄さよ!というかあの年齢にして大御所感の凄みがエグイ!本作はアイナちゃんファンが多数劇場に足を運んでいるだろうからこういう事書くと呪い殺されそうで怖いんですが…砂浜で2人が並んで寝転んでいるシーンとかさ、あと回想シーンで帯広の雪の中で2人並んで寝転んでるシーンもあったんだけど…すずちゃんの美貌が神々しくてヤバかったわマジで!^^;
あーやって並んじゃうとどうしてもアイナちゃんのビジュアルは霞んで見える、と言うか更にすずちゃんの美しさが際立ってしまう、と言うのか。(アイナちゃんファンごめんね!)
まー他にも触れたかった項目あるんだけどさー、例えばなっちゃんは多分震災がなかったら関西の大学に逃げて(地元の医大はそもそも受験してなさそう)そのままキリエをブッチ斬るつもりだったんやろ?それが震災があったから自分もトラウマになってキリエに対する贖罪の気持ちもあってルカに絡んでいったんやね、とか(松村北斗君はなかなか表情の演技も上手かったと思うよ)、どのツテで参加したのか知らんけど「霜降り明星」の粗品さんはそんな悪い出方してなかったと思うけど、多分BiSHファンから無意味に叩かれるだろうなーとかw
そんなこんな。思うトコロダラダラ書いてたら上映時間同様、自分のレビューも長くなってしまいました。やっぱ岩井作品って含みが多過ぎて書く事増え過ぎちゃうんだってー