Rise(創世記)、Dawn(新世紀)とつづいたリブート版「猿の惑星」完結編はWar(聖戦記)ときた。邦題が聖書っぽいのは、このシリーズの終わり方をFOX日本支社が予測していたからかしら。
肉親の死、復讐、隷従、そして解放という流れ。猿たちが新天地を求めて旅立つのはエクソダスそのものだし(だからリーダーであるシーザーは、モーゼと同じように……)、紅海は割れないけれども奇跡が起きて、な展開。
ストーリーだけ追えばとてつもなく暗い前半。これまでと同じように人種差別が投影され、猿は徹底的に虐待される。
しかし、映画的興奮がたいそう仕込まれているので退屈しないですむ。騎馬での追跡行(しかも一騎はニケツです)は、近ごろめずらしいまっとうな西部劇だし、スキンヘッドを手のひらでなでまわす“大佐”(ウディ・ハレルソン)はどこをとっても「地獄の黙示録」(それを匂わす落書きまであります)のマーロン・ブランド。
末恐ろしいほどの美少女が登場して、ノヴァと猿によって名づけられる。シーザー、コーネリアスと並んで、オリジナル版へのリスペクトありあり。
大脱走ばりのトンネルからの脱出劇があり、最後の“奇跡”のなかで猿だけが生き残るのは、猿のある特性の結果。考えてあるなあ。
シーザーがモーゼであり、キリストとなるラストでは、画調まで史劇っぽい。
映画をひたすら知っている監督と、やはり今回もすばらしかったアンディ・サーキスの演技。確実に再リブートされるはずなので、その際にはまた彼らを起用してほしい。
「壁をつくるなんて、どうかしている」
というセリフが(右翼的であることで有名な)20世紀FOXの映画で実現するあたり、気合いが違っている。見たかトランプ。
ただね、吹替版でまたFOXはやってくれました。コメディリリーフとはいえ、あの人をバッドエイプ役に使ったのには気が遠くなった。「プロメテウス」で剛力彩芽を起用して大失敗した反省は今回も活かされていない。