あ、そうか。あの闘病記的私小説「生還」も本音を申せばシリーズにカウントされていたのか。なるほど。車椅子の生活を強いられ、妻を休ませるためにデイサービスに通う生活。あの小林信彦が。
いつも病弱が強調されていたから、だからこそこの人は不死身なんじゃないかと思っていたけれど……戦後最低の宰相と断じた安倍晋三がこの単行本がまとまったあとに退陣したり、まもなくコロナという疫病が世界を襲うことになる。
小林さん自身にとっては不幸かもしれないけれども、もっと長くコメントを発しつづけてほしい。日本のもっともまっとうな定点観測がこのコラムなのだから。あっさりとしたタイトルは、きっと考えることすらしんどいのか。あるいは、リスタートの覚悟なのか。