角の向こうを見通す、とまで形容された国家犯罪局の元長官ヨハンソン。凄腕の彼は脳梗塞に倒れるが、そんな身体ですでに時効を迎えた幼女殺人事件に取り組む。
事件の捜査と、リハビリの状況が交互に語られ、味わい深い。意外に早く犯人は浮かび上がってくるが、それから先がなかなか考えてある。
そしてラストでしみじみ。
聞けばこれは作者が書き継いで来たシリーズの最終話らしい。脇役たちも(特に無能な刑事が)地元スウェーデンでは大人気なのだそうで、そっちも読んでみなければね。
わたしのお気に入りは、税務官だった義弟。いやな野郎なのに徹底的に有能であるあたりがいい。
だいたい、こんなセリフがあるんですよ。
「そんな車は見たことがないと言われました。そんな小さな車を乗り回すような知人はいないとね。その点については断言していました。彼女が知っているのはメルセデスとか、ジャガーとか、BMWとかそういう車種なんです。ご主人は大きなアメリカ車にしか乗らなかった、という話を聞かされましたよ。亡くなる前にはリンカーンに乗っていたんですって。ゴルフみたいな安物の車に乗っているような人と知り合いじゃないかと質問されて、侮辱されたように感じたみたい。最初にゴルフの写真を見せたときに言ってましたから。自分や知り合いがそんな安物の車に乗るなんて夢にも考えられないと」
これ、キーとなる女性の発言なんです。そこまでゴルフの悪口言わなくても(笑)。悪かったな俺が乗ってるのが“小さい安物のクルマ”で。ある程度は当たってるけどさ。今年買ったゴルフは190万円でしたけどもさ。