日本でいちばん美しい女優は誰だろう。宮沢りえ、夏目雅子、高橋惠子、北川景子、江波杏子、高岡早紀、アンジェラ・アキ……途中から自分の趣味がむき出しになってしまいましたことをお詫びいたします。
しかし、どんな人でも岸惠子だけは外せないのではないだろうか。圧倒的な美貌と、その華やかさはこの人特有のものだ。
同じ山田太一の「岸辺のアルバム」と「沿線地図」(ともにTBS)の、八千草薫と岸惠子を比べればわかってもらえるかと思う。貞淑な八千草薫が不倫に走る衝撃と違って、岸惠子には最初から不穏な雰囲気があったじゃないですか。同じTBSの「赤い激流」における(もうネタバレしてもいいですよね)“Rの女”のような、一種の異物感こそが彼女の真骨頂だった気がする。規格外、って感じ。
だから大女優としてザ・芸能人的な性格なのかなと思ったら、どうやらそそっかしくておてんばなお嬢さんだったようだ。
恋愛においても突っ走るタイプだったようで、フランスの映画監督イブ・シャンピと結婚してパリに移住するなど、当時としては衝撃だったろう。岩波書店の本なので、鶴田浩二(この人はいったいどれだけの女優と浮き名を流したものだか)との関係はどんなものだったのかとか、「約束」で共演した萩原健一が、彼女のことだけは何も語らなかったのはなぜかとか、そういう下世話な話は載っていないのでよろしく。それでもエッセイストとして一流である彼女の自伝はやはり面白いのでした。
ということで、本来は山本富士子が演ずるはずだった「細雪」と、高倉健と共演した「ザ・ヤクザ」を再見。美貌と同時に、本人は嫌っているらしいがその美声に圧倒される。
にしても、撮影が終わってしばらくたってからようやく「悪魔の手毬唄」が大傑作だと気づく当たり、やっぱりそそっかしい人じゃないですか(笑)