ジョン・マクティアナン監督 ブルース・ウィリス主演 89’年度キネ旬ベストテン第1位
おすすめDVDシリーズは、みなさんがこの映画を既に観ている、という前提ですすめます。ネタバレもありあり。
え?あなたは「ダイ・ハード」を観ていない?次回「エイリアン」も?まさか「JAWS」は?……何考えて生きて来たんです。今すぐビデオ屋に走れ!
映画館、ビデオ、DVDと何度も観ているこの映画(タイトルを意訳すると「なかなか死なねーなーこいつ」)。そのたびに感心するのは、んもうどこまで練り上げられた脚本なのか、ということ。原作(あったんだね)を読んでいないので比較はできないけれど、とにかく伏線につぐ伏線。それらを一気に収束させるラスト。ため息が出るくらい完璧な脚本である。
和田誠と三谷幸喜が、映画のディテールにこだわって対談した好著「それはまた別の話」(文春文庫。このタイトルに笑った人は、三谷のあのドラマを観た人ですね?いずれ特集しますのでお楽しみに)で「ダイ・ハード」は取り上げられ、実作者である三谷に
三谷:「ダイ・ハード」の決定稿を作家がただ一人で机の前で書いたんだとしたら、僕は潔く筆を折ります。
とまで言わしめている。それほどすき間なく計算されていることが何度も観ているとわかってくる。「神は細部に宿る」というが、この映画は再見に耐える小細工が満載である。
1.日本企業が既婚者を嫌うため(いえてる)、主人公の妻は旧姓を名乗っているが、家族写真を伏せているせいもあって、テロリストにいつ夫婦であることがばれるか、とのサスペンスをそれだけで発生させている。ラストのセリフにもちゃんとつながるし。
2.1のこともあって主人公ジョン・マクレーンはちょっとふくれていて、妻の有能さの証としてボスから贈られたローレックスが、さらなる夫婦関係の亀裂を観客に予感させる。が、そのローレックスとともにテロリストの首領を墜落死させることで、カタルシスを倍加させている。
3.クリスマスイブであることが徹底して利用されているストーリー(たった一人で、あれだけのテロリストと渡り合って生き残る、それだけでもクリスマスの奇跡)だが、裸になったマクレーンが、銃を隠すために使った小道具がクリスマス用のテープだったあたり、芸が細かい。ここまでやるかねしかし。
……他にも、【西海岸】【東部】【日本】といった地域性が十分に活かされていることや、現代のハリウッド活劇の主人公に必須な条件「考えろ!考えろ!」を本当に口にしているあたりに感心感心。
次回「エイリアン」のリプリーもそうだが、今や技術やメカに疎い人間はヒーローやヒロインになれないこともよくわかる。無理してシリーズ化されているが、「2」も傑作。「3」は数段落ちる。が、キャッチコピーは「3」が一番優秀だった。
「世界で一番運の悪い男」
そりゃそうだ(笑)。ダメ押しの一撃も含めて、現在のエンタテインメントの方向性を決定づけた金字塔にして教科書のような作品。ま、教科書というには四文字言葉が多すぎるんだけどさ。
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