その1はこちら。
ある日、世界中の女性たち(性染色体がXX)に異変が起こる。眠りについた途端に体内から繊毛が吐き出され、蚕のような状態となり、眠り続ける。必死で眠らないようにする女性たち。しかしただ一人、その症状と無縁の女がいた……
まず、フェミニズム方面から怒られなかったのだろうか。あるいは賞揚されたのだろうか。理屈はどうあれ、ここで描かれるのは文字通り“女のいない世界”なのである。
ところが、このあたりが周到なところだと思うのだが、この作品の舞台は女子刑務所。さまざまな過去を持った女囚たちが、向精神薬などによって眠りとたたかう描写がえぐいえぐい。
なにも語らず、なんの反応もしめさない蚕の女性たちに、男たちが示す態度はさまざまだ。強烈な状況に追い込まれた男女それぞれの葛藤。ファンタジーというくくりにおさまらない過剰さ。キングらしさとはこれだろうか。
「アウトサイダー」は、一転して地味に始まる。ミステリ色が強いというか。
残虐な方法で殺された少年。指紋や目撃証言からある人物の犯行であることは確実。しかし良き家庭人であり、少年野球の指導者でもあるその人物には鉄壁のアリバイがあった……
上巻は、このアリバイをめぐる警察小説のようだ。このあたりは、キングの日本の代表的フォロワーである宮部みゆきの方が上手かも。ところが、途中からとても魅力的な名探偵が登場し、ここからホラーとしてどんどん面白くなっていく。
他人とのコミュニケーションが苦手で、自分に自信がなく、導いてくれた先達のようでありたいと願う女性探偵。彼女はわたしがキングを“お休み”している間にデビューしたキャラだったみたい。こうなるとそちらも読まなくてはならないんでないの。ああこうやってまた長い夜がキングで消費されていく。
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