「伍長、わたくし、この映画を見てとても哀しくなりました」
「そうか……っていうかライオン・キングやアラジンに続いてディズニーのたんびにこの『伍長とその部下』シリーズやるのかよ。まあいいや、哀しいってのはなんかわかる。監督ティム・バートン、音楽ダニー・エルフマンの鉄壁の布陣、周到な脚本、有名なピンクの象の行進(アル中の妄想の象徴)まで描いて、予想どおりみごとなハッピーエンド。それでも、哀しいんじゃろ?」
「そうなんです。まあ、オリジナルのアニメがすでにそうなのかは知らないんですけど」
「ちょっと待て。お前、アニメのダンボを見たことないのか?あの名作を」
「いや、あの、よくわかんないんですよね。おぼえてないっていうか」
「あーよかった。実はわしもなんじゃ(笑)。子どものころに親に連れて行ってもらったか、あるいは息子と娘にビデオで見せたような見せてないような……」
「誰だってダンボが空を飛ぶシーンは見た記憶はあるはずだし、お母さんの名前からあの航空機ジャンボの名前がついたってのも有名ですけどね」
「ってことで、あくまでティム・バートンの新作として見てみよう。あいつはディズニーのアニメーターがキャリアのスタートだから、凱旋したってことでもある。」
「いろんなところにバートン印がついてましたよね。」
「ダンボ自身が耳が大きすぎてバカにされてるし、コリン・ファレルも左腕を失っているという“異形のもの”の物語なのはいつもどおり。マイケル・キートン(ビートルジュース)、ダニー・デヴィート(バットマンリターンズ)、エヴァ・グリーン(ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち)とおなじみの役者をそろえて、夢のようなアクションで異形のものの勝利を歌い上げる。でも」
「そうなんです。それでも、哀しいんです。思うに、この映画の動物たちってしゃべらないじゃないですか。サーカスの動物のもの悲しさが露骨に……」
「ラストでそのあたりを払拭するんだけど、それでも一抹のさみしさ哀しさはある。でもそれってティム・バートンの体質じゃないか。あいつの映画で心から笑えるのってほとんどないし。本領を発揮したみごとな作品とも言えるじゃろ」
「(エヴァ・グリーンを見てれば幸せなくせに)」
「なにか言ったか?」
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