「カジノ・ロワイヤル」につづいて、激しいアクションがほんとに痛い感じ。この二作は、まるでこれまでの能天気な007から人が変わったよう。代わってるけど。
めずらしいことに前作の2時間後という続篇的設定。だから余計な説明なしに強烈なカーアクションから始まる。やっぱりカーチェイスはヨーロッパの道路にかぎります。道が狭いし、風景が美しい。
ちょっとネタバレ。いつもオープニングに設定してある「観客に向けてボンドが拳銃を撃つ」おなじみのシーンが、「慰めの報酬」ではラストに仕込んである。これは“いつもの007”は次回から始まりますよ、という合図かも。
でも、Qがつくる秘密兵器に頼るボンドは、やはり一種の堕落だと思わせるくらい今作の肉弾戦は気持ちいい。なにしろジェームズ・ボンドは何度も血をながし、スーパーマンではありえないあたりをキチンと描いている。
アストンマーチンは前作につづいてあっという間にボロボロになり、着替えが用意できない状況では血で汚れたシャツのまま。これまでだったら、どこでその服を用意したんだって笑えたり、ラストの『爆発しながら崩落するホテルからの脱出』あたりでご都合主義(普通死ぬだろ)が見えたりもしたろうに。
だいたい、「潜水服は蝶の夢を観る」で好演したマチュー・アマルリックを悪役にもってくるなんて、狂いっぷりも板についている。ダニエル・クレイグの身体が動くうちは、ぜひともこのシリアス路線で突っ走ってほしい。
実は欠点もある。ボンドガール、オルガ・キュリレンコが意外なほど魅力がないことや(お決まりのベッドインがないのはそのせいではありません)、カーチェイスや滑車を使ったバトルがすばらしいのに、いちばん金がかかったであろう空中戦がさえないとか。
ユーモアの欠如も指摘されるところだ。あんなにテンパってばかりいるボンドにはたして女性がなびくものだろうか(セックスもあまり上手そうじゃないし)。
ドライマティーニじゃないカクテルをいくら飲んでも酔えないとか、「ゴールドフィンガー」のパロディもポール・ハギス脚本らしく礼儀正しく用意してはあるのだが。
しかしそれに倍する暴力的な魅力がダニエル・クレイグにはある。彼が着るトム・フォードのスーツはやたらにかっこいいです。ほしい!オレに似合うかどうかは別にしてとにかくほしい!
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