また観てしまった。これで3回か4回は観ている。「ハメット」。大好きな映画なのである。
でも世間的には失敗作として知られていて、作品よりも製作の裏側のほうが面白いとか、「今までに見たなかで最低の映画」と製作者自身が言い放ったりしている。
その製作者とはフランシス・フォード・コッポラ。ジョー・ゴアズの長大な原作を、さて誰に監督させようかと彼は考えた。
コッポラの頭の中に、ロマン・ポランスキーの「チャイナタウン」があったことは疑いない。だからアメリカン・ハードボイルドの映画化に、外国人を起用することにためらいはなかった。
第一候補はイギリス人のニコラス・ローグ(「赤い影」「地球に落ちて来た男」)。しかしタイミングが合わず、次はフランス人のフランソワ・トリュフォー(「ピアニストを撃て」「黒衣の花嫁」)に声をかけるが断られ、ドイツ人ヴィム・ヴェンダースに落ち着いた。
だけれども、製作者であると同時に優秀な映画監督であるコッポラは、徹底的にこの作品に口を出し……結局、完成まで7年もかかってしまったのである。酷評の嵐、興行は大赤字、最低の映画とコッポラが吐き捨てるのもわからなくはない。
しかし見せる。くどいようだけれどもわたしは大好き。主役はダシール・ハメット。「マルタの鷹」「血の収穫」(黒澤明の「用心棒」はこの作品を翻案)で知られ、筋金入りの左翼だったハメットは、作家になる前はピンカートン探偵社に勤務していたのである。その設定をもとに、ゴアズはむかしの同僚に引きずられてハメットがチャイナタウンにおける事件にのめりこむお話に仕立てた。
ジョン・バリーの流麗な音楽もジェリー・ゴールドスミスのチャイナタウンのテーマ曲を意識しているんでしょう。ハメットを演じたフレドリック・フォレストはハメット本人を意識したメイク。タイプライターと格闘する作家、不意打ちの暴力、まるで舞台劇のようなセット……いいですなあ。
そして今回初めて気づいたんだけど、脚本がミステリ作家ロス・トーマスで、なんとラスト近くに出演までしています(“石油”と呼ばれる富豪)。わたし、彼の大ファンなんですよ。
「女刑事の死」「八番目の小人」「黄昏にマックの店で」……うううまた読みたくなってきた。ところが彼の作品は今なかなか手に入らない。久しぶりにヤフオクに挑戦か!
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