タイトルどおり将棋ミステリ……のはずがどんどんねじれていく。年齢制限があって年に4人しかプロになれない棋界の厳しさに跳ね飛ばされた男たち。それぞれが諦念を抱えて生きていくのだが、そこに宗教じみた将棋や犯罪がからんでくる。
地の文が松本清張的な社会派で、将棋名人が実名でどんどん出てくる。将棋会館のありようも具体的。その将棋会館の近くの神社に、矢文の形で詰将棋が刺さっていて、しかしこの詰将棋は成立しない“不詰め”に見える。
しかしこの謎を解きえた人間だけが別の世界に招待される……ね、伝奇小説みたいになっているし、「八つ墓村」ばりの洞窟シーンまで。この転調は奥泉光の得意技ってところか。
よく考えるとある登場人物の壮絶な邪悪さが核になっている。で、その“よく考えると”な部分にミステリ好きとして納得。キャラたちが将棋用語で語り合うあたりの味もいい。
AIに勝てない将棋というものに未来はあるのか、にこんな解を提示するとは……
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