さすが青山文平。設定が絶妙です。本家と分家から交互に藩主を出す特異な藩。派閥抗争を防ぐために長年苦労してきた二人の男。そのうちの一人が引退を決意する……この、引退の理由は、他の人が書いたら笑えるところだろうが、青山さんが書くと加齢の哀しみが胸に迫る。
先々代の藩主が、その豪胆さで藩を隆盛に導いたことが後々に(良くも悪くも)影響する。そして、すでに“終わった人”だったはずの人物が、先々代を祀った神社で刺殺される。それはなぜか。そして、誰がやったか……
ミステリとしても上等。犯人の動機はとてもよく理解できる。そして、ラストの叙情。「黛家の兄弟」の上をいっています。まあ、青山さんと比べてはかわいそうだけれども。
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