前篇の特集はこちら。
宮部みゆきの原作は映像化がむずかしいことで知られている。これまでで唯一成功したのは大林宣彦の「理由」ではないか。膨大な登場人物にそのままオールスターキャストを起用し、しかも彼らにノーメイクで、日ごろの演技論を捨てて演じさせたのだ。つまり、宮部原作においては、登場人物のキャラがそれぞれ立ちすぎているものだから、こんな形でしかドラマ化は成功しないのかもしれない。
「ソロモンの偽証」の作り手たちは、大林と同じ方向をめざしたといえると思う。1万人にもおよぶオーディションを行い、選んだ中学生たちを徹底してチームとしてあつかった成果は、裁判の会場である体育館において、傍聴する生徒たちにいたるまで、一人ひとりがしっかりとその役柄に入りこんでいることで明らかだ。
これから観る人は、主演級ではないエキストラたちに注目して。出てきた証言にごく自然に反応している。どれだけ手間がかかったことだろう。
にしても主演の藤野涼子は飛びぬけてすばらしい。わたしは女の子が全力疾走している場面に弱いのだけれど(なんでだ)、この映画で雨の中を走る彼女は、映画の神に見守られているかと思うほど美しいのだ。
その疾走は、トラックとぶつかりそうになって(前編の松子ちゃんの事故を思い起こさせ、観客は息をのむ)終わるが、娘を抱きしめた父親(佐々木蔵之介)が、あとで妻(夏川結衣)につぶやく言葉は、すべての親に痛切に響く。
「あのまま涼子が死んでいたら、あの子の本当の姿を知らないままだった」
もうね、このあたりから涙がとまらなくなる。それに、わたしが原作で最も泣かされた“和服の女性”が、森口瑤子というどんぴしゃのキャスティングで登場し、なぜこの裁判が行われなければならなかったかを理解させてくれる。
犯人の邪悪さと同時に、“その瞬間”を描くことでその人物の孤独まで一瞬で描き切り、原作にみごとに対抗している。ラストに流れるのはU2のWith Or Without You。これまたどんぴしゃの選曲。終盤の正論の連続がきつくもあるけれど、傑作であることはゆるぎません。絶対観て!
最新の画像[もっと見る]
- 「スオミの話をしよう」(2024東宝=フジテレビジョン) 20時間前
- 今月の訃報2024年10月PART1 追悼西田敏行 76歳没 2日前
- 「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」Joker: Folie à Deux(2024 WB) 3日前
- 光る君へ 第39回「とだえぬ絆」 6日前
- 「エレファントヘッド」白井智之著 KADOKAWA 6日前
- 「沈黙-サイレンス-」Silence (2016 パラマウント) 7日前
- 日本の警察 その147「こちら空港警察」中山七里著 KADOKAWA 7日前
- 明細書を見ろ!2024年10月児童手当号 偶数月 1週間前
- 「ヘルドッグス」(2022 東映=SONY) 1週間前
- 「奏鳴曲 北里と鴎外」海堂尊著 文藝春秋 2週間前
まあ、俳優としては大好きなんですけどね。
藤野さんの魅力で引っ張られる作品でしたね!
田畑さんは素晴らしいなあ.大好き.
昔から美しさNO.1と思ってる森口さん,
短時間でも役の存在感最大限出してくれ
ますよね.
(「鍵泥棒のメソッド」のラストシーン最高!)
生徒役の皆さん含め,素晴らしかったです.
津川さんはちょっと役に合ってたか疑問ですが.
宮部作品の映像化ではドラマ「火車」の
財前直見版が好きでした.(森口さんも出てた)
クライマックスで三田村邦彦と角野卓造が
顔見合わせて「ああっ!」て叫ぶところが
今だに忘れられない・・・
もいっかい観たい・・・
あまり評判がよくないようなので心配。
真犯人を知っていた方が、安心して見れる
ことは確かでしょうが(笑)
「ソロモンの偽証」の原作を読みましたよ。
面白かったです。
中学生独特の精神状態と行動がよく描かれていると思いました!
そして映画の前篇も観ましたが良かったです。
後篇も観ようと思っていますよ。
今から楽しみです!