おっと青山文平の新作が出てたのか。さっさと読み始める。
…………あれ?わたしはこの小説を読んでるぞ。単に改題しただけなのかな。
小藩の先代の殿様(と言っても21才)の屋敷に一季奉公をつづける主人公は、未来になんの展望も持っていない。そんな彼がご老公(くどいようだけど21才)の手が付いた女中を実家に送り届けることになり……
そうだよ「江戸染まぬ」じゃないか。あの切れ味鋭いラストはよく覚えている。しかしあれは短篇だったのに、この小説は以降もつづく。おそらく、登場人物たちに青山はまだ思い入れがあり、長篇化したというところなのだろう。
命拾いをした主人公が、魅力的な人物たちと出会いながら、その女中に会うために苦労を重ね、商売人として成長していく。
そして、最後の最後に誰が誰に「底惚れ」しているかが判明し……あいかわらずシャープな文体。そして男の熱情を描いて飽きさせない。“次の志水辰夫”の域を超え始めている。
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