週明けに国際会議を控え、厳重な警戒下にあった那覇空港で、ハイジャック事件が発生した。
三人の犯行グループが、乳幼児を人質に取って乗客の自由を奪ったのだ。
彼らの要求はただひとつ、那覇警察署に留置されている彼らの「師匠」石嶺孝志を、空港滑走路まで「連れてくること」だった。
緊迫した状況の中、機内のトイレで、乗客の死体が発見された。
誰が、なぜ、そしてどのようにして―。
スリリングな展開とロジカルな推理!デビュー作『アイルランドの薔薇』をしのぐ「閉鎖状況」ミステリーの荒技が、いま炸裂する。
いやはやとにかくこれは笑える。ハイジャック事件の最中にもうひとつの、しかも完全な密室殺人事件が発生し、しかもその解決のためにハイジャック犯が善意の第三者である主人公に探偵を依頼する……こんな設定、よく考えつくよなあ。
しかしこの探偵、性格の方の設定はうまくいってなくて、どうも感情移入しにくい。むしろ犯人に読者のシンパシーを向けようという作者の遠謀では……なんてはずはなくて、これは単に石持がまだ下手くそなだけだろう。文章も硬い硬い。
しかもハイジャック犯たちが師匠を「解放」ではなくて単に「連れてくる」だけを要求したのはなぜなのかという謎への答は、ちょっとルール違反でもある。違反はかまわないのだが、ではなぜあんなラストにしてしまったのかと……いかん、紹介するこっちがルール違反しそうだ。
とりあえず、列車に乗って退屈しそうな3時間があったら、キヨスクで速攻で買うことをおすすめする。カッパ・ノベルズのなかでは異色の作品。“今の”西村京太郎とか赤川次郎よりだったら、はるかに面白いことは保証します。下手くそといっても、彼らよりは文章はマシだしね。
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