第36回「前畑がんばれ」はこちら。
「この国を、世界に向かって見せることができるんですか」
日中戦争に突き進む、軍事国家と化したニッポンに田畑は失望を隠さず、嘉納治五郎にオリンピックの返上を求める。
2020年のオリンピックもまた、世界に誇れる国と胸を張れるのか……的な雰囲気がむんむん。低視聴率は、そんな左翼臭のためだと主張する人もいるようだ。
わかってないなあ。そんな世間の息苦しさを払拭できるドラマこそが「いだてん」なのに。クドカンが描いているのは政治ではなく、時代そのものであり、時代を象徴していたのが嘉納治五郎だと主張している。
まあ、金栗は河野一郎を求めて朝日新聞社に乗り込み、志ん生は読売の旗の下に倒れるあたりで、深読みもしたくなるというものですが(笑)。
にしても、嘉納治五郎がこんなにオリンピックにからんだ人だとはこの大河を見るまで知りませんでした。柔道家として、姿三四郎に出てくる矢野先生のモデルくらいの認識だったからなあ。
もっとも、関係した事物はメジャーそのもの。水道橋の駅をおりて東京ドームをすぎれば講道館が見えるし、亡くなったのは、今は山下公園に係留してある氷川丸。「氷川丸船内図」が船室に掲示してあるなど、金のかかった美術はさすが大河。
このドラマにおいて嘉納治五郎は教育者としての側面が強調され、私生活などはいっさい描かれなかった。それであの愛敬と苦悩を視聴者に届けたのだからやはり役所広司は名優だ。
この大支柱が退場し、「いだてん」はどこへ向かうんでしょう……星野源登場。そう来たかあ。
彼が演じる平沢和重と嘉納の最後の晩餐は、国旗をさしたサンドイッチ。人生で一番面白いことを見ないまま、治五郎は息を引き取る。田畑に、ある品を遺して。なんかもう平沢のオリンピック招致演説へのネタ振り満載ですっ!
画像は、数多ある役所広司の作品のなかでも突出してやばい「シャブ極道」。ピエール瀧のクスリなんてかわいいもんです(笑)。
第38回「長いお別れ」につづく。
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