土曜の朝、映画館に行こうと心に決める。候補は鶴岡まちなかキネマで「春に散る」(ちょうど沢木耕太郎の原作を読み終えたばかり)か、フォーラム東根で「ゴジラ-1.0」。東根に決めたのは、この「愛にイナズマ」もちょうどいい時間帯だったから。まあ、どっちにしても佐藤浩市の作品ではあった。
主演の花子に松岡茉優。映画監督志望の彼女は、斬新で個人的な作品を作り上げようとしているが、老獪なプロデューサー(MEGUMI)と保守的な助監督(三浦貴大)によって企画自体をとりあげられてしまう。
……ここまでの展開はちょっとしんどいんですよ。確かにプロデューサーと助監督は薄汚い業界人のように描かれてはいるけれども、それなりに魅力的。だけれども、花子は世間知らずのはねっ返りにしか見えないのだ。
やばい、と思いました。あの「ぼくたちの家族」「舟を編む」「夜空はいつでも最高密度の青色だ」の石井裕也監督にして、妙に独りよがりな映画にしてしまったのではないかと。
ところが、一種の天使として窪田正孝(殴られて血のにじむマスクが妙におかしい=この作品の英題はMasked Hearts)が登場してからの展開が意表をつく。花子は自分の家族を題材にして映画を完成させようと父(佐藤浩市)とふたりの兄(池松壮亮、若葉竜也)にカメラを向けるが……
母親がいないのはなぜか、余命一年を宣告されている父親がそのことをどう娘に伝えるか、などがからみ、わたしの涙腺は決壊した。タオル地のハンカチがぐしょぐしょ。
これまで、常に意識的な人物を演じてきた佐藤浩市が、なすすべもなく人生に流されていく弱い人間を演じて絶妙。すばらしい映画だった。東根まで来てよかったよー。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます