金と女に汚く、好きな言葉は「当店からのサービスでございます」な最低の男(中井貴一)。彼は実力者の官房長官(草刈正雄)にすり寄ることで総理の座を手に入れた唾棄すべき人間だった。彼は投石を頭にうけて記憶を失い、しかしそのことで政治を……
脚本・監督は三谷幸喜。紹介するまでもなく、例によってフジテレビを中心に初日から宣伝のために出まくり。劇場挨拶に命をかける人だから、確かに彼が出ているだけでチャンネルを変える気にはならない。大ヒットの何パーセントかは彼自身の宣伝活動のおかげじゃろ。
大好きな三谷作品だから楽しみで楽しみで、というわけでは残念ながらなかった。彼の監督作品はすべて見ているというタランティーノ状態ではあるけれど、前作「ギャラクシー街道」が、気が遠くなるほど笑えなかった記憶はしっかりとございますので。
ついでだからランキングしておくと、彼の作品で誰にでもおすすめできるのは
「ラヂオの時間」
多少なりとも異議があるのは
「ステキな金縛り」
「みんなのいえ」
できればなかったことにしたいのが「ギャラクシー街道」といったところだろうか。
それでは「記憶にございません!」はどのレベルだったろう。
ストーリーはふたつの核から成っている。まずは「クリスマス・キャロル」。ディケンズのあれね。守銭奴スクルージが改心するお話。人間の心の中には善なるものが存在することをうたい上げた名作。
スクルージそのものである首相が、どのように改心するかが妙味。強引だけど首相をとりまく秘書官(ディーン・フジオカ、小池栄子、いつも笑っていて無責任な感じがすばらしい迫田孝也)が“3人のゴースト”と言えるだろうか。
そしてもうひとつの柱があの「総理と呼ばないで」(フジ)だ。古畑任三郎の余勢を駆って田村正和が不人気な総理を演じたドラマ。その不人気を逆手にとって彼は……そうなの、今回とまったくいっしょなの。以下次号。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます