事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「都立水商(おみずしょう)」室積光著 小学館

2007-12-19 | 本と雑誌

Omizushou 文科省の役人が酒の勢いで突っ走る。
「商業高校は、とにかく商売をやりたい子が行くわけだろ?」
「そうだな」
「工業高校は、工場でものを作りたい子が行く」
「うん」
「農業高校は農業をやりたい子。水産高校は、船に乗って漁をやりたい子が行く」
「そうだろうな」
「じゃ、世の中には水商売ってものがあるんだから、そういう道に進む子のことも考えにゃならんだろ?」
「そりゃそうかもしれん」
「だから『水商業高校』があってもおかしくないだろ?」
「……よせよ」
「なんで?なんでだよ?てめえ、水商売だけ差別するのかよ!」

かくして予算は通り、新宿歌舞伎町に『東京都立水商業高等学校』が開校する。専攻科目は「ホステス科」「マネージャー科」「バーテン科」「ソープ科」「ヘルス科」「ゲイバー科」など。

 始業前には担任が教室の前で待ち受けていて、厳しい服装チェックが入る。
「何だこの髪は?染めてこんかア!」
授業もきびしい。
「それでは今日は『送り』について説明するぞ。『送り』とは、終電後、ホステスやスタッフを車で送ること、およびそのための人材の……」

……面白そうでしょ。でも残念ながらこのイメージを超えるワクワク感は薄いんだよな。むしろ全編に横溢する説教の嵐の方が印象深い。この作品が処女作である元役者の室積が、高野連的なものに代表される今の教育への批判を優先させたからだ。この批判はまことにまっとうで、耳に心地いいが、でも小説としての躍動ももうちょっとほしかった気はする。「あの武田鉄矢氏も推薦!!」(笑)という帯が、良くも悪しくもこの作品をあらわしている。おしい。

 ちなみにわたしがいちばん好きなフレーズはこれ。
「いつまで野球を教育の一環とか言ってんですかね。だいたいスポーツで、スポーツ以外のことまでついでに教育しようなんて、教育する側が横着だっていうんですよ」至言。

                   ドラマ化は真田広之-桜井幸子でお願いします(笑)☆☆★★★

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