その7「影武者」篇はこちら。
お若い方々にとって、三船敏郎とはどんな存在だろう。映画中心のスターだったからこそ、むしろなじみがないのかもしれない。テレビでメジャーなのは
「男は黙ってサッポロビール」や、
「ん~寝てみたい」
なにやってんだ(笑)と言いたくなるマルハチのCMなどだろうか。世界に通用する俳優として文句なく日本最大の存在なのに。
彼の葬儀は、石原裕次郎や美空ひばりほどの騒ぎにはならなかった。それはおそらく、晩年のスキャンダル(テレビに三船美佳が出てくるたびに、わたしは暗い気持ちになる)が影響したのかもしれないし、いわゆるアイドルだったことが一度もなかったこともあったかもしれない。
むしろ彼は日本人の父として今でも屹立しているし、そのイメージは今でも十分に機能している。
そんな経緯がありつつ、彼ほど出演した名作が多い俳優はいない。しかも、エバーグリーンと呼ばれる不朽の名作に彼の名は思い切り刻まれている。その意味で、彼ほど幸福なアクターはいないと断言できる。
え、あなたは「七人の侍」を見ていない?「椿三十郎」は?「隠し砦の三悪人」「天国と地獄」は見てるよね。「赤ひげ」はどうだ。「野良犬」「酔いどれ天使」「用心棒」黒澤以外にも「黒部の太陽」「上意討ち」「風林火山」そして「日本のいちばん長い日」……やっぱり、幸福な人だったのである。
梶芽衣子篇につづく。
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