34年間、七代のアメリカ大統領に仕えた黒人執事の物語。単なるそっくりさんショーに終わっていない、という形で絶賛されているけれど、いやいやそっくりショーとしてもなかなかです。
・ドワイト・アイゼンハワー(ロビン・ウィリアムズ)……軍人出身であることで、むしろ軍拡に歯止めをかけた大統領。黒人政策では白人至上主義者たちを攻撃。意外に陰鬱な表情が多い役をロビン・ウィリアムズが静かに演じている。共和党。
・ジョン・F・ケネディ(ジェームズ・マーズデン)……徹底したお坊ちゃまとして描写される。お坊ちゃまであるがゆえに理想家で、黒人政策についても一夜にして積極的になる。民主党。演ずるマーズデンはX-MENのサイクロプスの人。
・リンドン・ジョンソン(リーヴ・シュレイバー)……使っていない部屋の電気をすべて消させ、便秘症。ここまでの描かれようはちょっとかわいそう。わたしが物心ついて意識した最初の大統領。北爆拡大のため、とにかく不人気。実はこんな人物だったとはなあ。民主党。
・リチャード・ニクソン(ジョン・キューザック)……このキャスティングには意表をつかれました。最初に出馬したときに、執事たちに「いいのかあんなお坊ちゃま(ケネディ)をホワイトハウスに入れて」と毒づくあたり、そうだろうなあと。ウォーターゲートで辞任する時点での含み綿はちょっとやりすぎ。スマートなニクソンでもよかったのに。共和党。
・ロナルド・レーガン(アラン・リックマン)……ナンシー夫人はジェーン・フォンダ。筋金入りの反戦活動家だったフォンダが演じるあたりは妙味。彼ら夫婦は黒人に対して誰よりも親密。しかし、そのことで逆に……共和党。
世の中をよくするために白人に仕えているとする執事と、そんな父親に反発し、直接的な闘争にまい進する息子。
このギャップは大きいが、お互いがお互いを理解するラストはだからこそ泣ける。一筋縄ではいかないストーリー。一筋縄ではいかない歴史がアメリカ近代史であることとうまくシンクロしている。
主演のフォレスト・ウィティカーはもちろんすばらしいが、奥さん役で変なルックスのおばさんが出てきたなあと思ったら、これがかの有名なオブラ・ウィンフリーだったんですね。すんごい存在感。
大統領もしかり、ひと家族の道のりもしかり。
それがアメリカの歴史ときちんと相まってる。うまい脚本でした。
話にもっていくのかと思ってました。
まさかあそこまでガンガンやるとは。
黒人にとって、オバマの登場がどれだけ意義深いものだったか、
あらためて思い知らされましたよ。