第十六回「恩人暗殺」はこちら。
ネットでは、平岡円史郎の退場への哀惜が語られている。まったくだと思う。堤真一の、過剰な(それがこの大河の特徴だと思います)江戸弁が、どれだけ心地よかったか。シブサワズたちの武蔵弁?と比較すればよくわかる。いやいいんだけど方言でも。
ただこの時代のお殿様はほぼ全員が江戸生まれの江戸育ちだからお国訛りなどなかったわけで、だから静かな共通語(それは井上ひさしの「國語元年」を参照して)で、しかも2オクターブほど下げて語る徳川慶喜(草彅剛)のうまさが光る。
脚本の大森美香さんはどこまで計算していたかはわからないけれども、円史郎に客(視聴者)が熱狂することは承知していたと思う。このドラマは中心がなかなか見つけられないので、歴史上どうにも評価しづらい人物がトリックスターになる。で、この人はぴったりだ。
女でさんざん苦労し、たどりついたのが“自分が死んだ後も三味線の稽古とかで食っていける伝法な女”というのは、政治的に正しくないけれども男の理想ですよね。木村佳乃は本当にそのあたりがうまかった。上から目線だけど、この人キャリアの途中からすごくうまくなってないですか。
栄一と妻が、はっきりとそういうことになろうとしているときに邪魔が入るあたりはラブコメとして王道。“仕込む”って(笑)。またしても政治的に正しくない発言ですけど、柄が大きい橋本愛って実にいいですよね。確実に演出はそこを意識していると思います。檀れいが「武士の一分」で見せたのと同等の和服の魅力。
禁門の変が歴史上の大きなドラマとして存在し、徳川慶喜が激情の人ではなかったことが後に影響するってあたりはゾクゾクする。さああの大坂逃亡劇にどうつなげるのかなあ。
今回は、侍たち(波岡一喜の涙目はよかった)が泣いてはいけない回で、それでも泣いてしまうあたりの仕掛けに納得。涙目じゃなくて、わたしちょっと泣いちゃいました。
第18回「一橋の懐」につづく。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます