この日に限らず、夜のコンビニはヤンキー入ってる連中のホームグラウンドだが、花火大会の夜はなお彼らの気合いが違っている。色とりどりのヘアーと浴衣のコーディネート(というよりハレーションだな)が味わい深く、花火の前に眼がくらみそうだ。
十数年前、ある事情があって私は酒田近郊のモーテルをすべて回ったことがあったが(その結果は《庄内おもしろモーテルマップ》としてまとめ、仲間内でおおいに重宝されたものだ……あ、今度このWEBで公開しましょう。「アレの続き」特集以来こわいものはございませんので)、ある晩、酒田駅前のステーションホテルの経営者を私の車に乗せて、その婆さんを系列の別のホテルに連れて行く破目に陥ったことがある。今考えてもすごいシチュエーションだが、そのときにコンコンと説教されながら(「いーがー?彼女は大切にさねまねおんだぁ」)いろいろと伺った情報によれば、酒田においてホテルが満室になる夜は三つ。大晦日と、成人式と、そして花火大会なのだそうだ。私が“現役”の頃からそうだったのだからえらいことは言えないが、深夜まで外出できる数少ない機会であることと、やはり花火が若い連中を発情させている側面は否定できまい?
その結果どうなるか。
3年前だったか、例によってとびしま丸の発着場で花火を見ていた夜。焼とうもろこしの屋台に、息子と一緒に行列していた時のことだった。すぐ後ろに並んだヤンキー系カップル、小声で言い争いをしている。聞き耳をすますと女の子の方の発言がドラマそのもの。
「あたし……産むさげの」
どひゃー、思わず息子の耳をふさぎたくなってしまった。
恋愛において現役であることの辛さと哀しさが胸に迫る。独身時代に、当時の彼女と公衆電話で話していて(ああ当時携帯があったら)「なんか……来ないのよ」と言われてボックスの中で腰をぬかしそうになったことまで思い出してしまった。
私の場合は、ただの生理不順で話はすんだが、あのカップルは今どうしているだろう。ヨチヨチ歩きを始めた子どもといっしょに、やはり花火を見つめているのだろうか。
このようにして、酒田市民を拡大再生産(笑)するという予想外の成果まで挙げる花火大会。冷静に考えれば、企業の宣伝効果だけをとれば蕩尽といってもいい行事だが、十数万人を一度に興奮させうる娯楽なんてそうはない。エンターテイナーとしての花火師はもっと評価されていいし、不況もなんのその、もっともっと続いてほしいものだ。でもなあ、翌日のうちのグラウンドはゴミでいっぱい。お持ち帰りもよろしくたのむぜ、ヤンキー。
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