今日の魚 2006.8.17
ホシテンス Xyrichtys pavo (Valenciennes)
今日は南の海で見られるベラの仲間を紹介しましょう。ホシテンスという、スズキ目ベラ科モチノウオ亜科に属する中型魚です。
●分布―太平洋熱帯域に広く。本州沿岸にはあまり見られない。
「日本産魚類検索第2版」では駿河湾、高知県以南に分布する、とのことです。Fishbaseではインド・西太平洋だけでなく紅海や東太平洋のパナマ~ガラパゴス諸島にまで分布しているとのことです。
●名前の由来―孔雀のような色彩
体に黒い紋があり、「ホシ」の名前が付けられています。紋がある魚には「ホシ」の名前が付いていることが多いようですね。「ミツボシクロスズメダイ」「クロホシイシモチ」etc...。学名の種小名(学名は2名法というやり方であらわし、本種の場合Xyrichtysが属名、pavo が種小名となる)pavo の意味は、「孔雀(くじゃく)」です。良く見るとなるほど、孔雀のような美しさがあります。FishbaseではIniistiusという、別の属に入れています。
●夜は・・・―砂に潜って睡眠
砂に潜った瞬間
モチノウオの仲間はメガネモチノウオやニセモチノウオなど砂に潜らないものが多いのですが、このテンスのグループだけは夜に砂に潜ります(写真)。砂には頭から潜ります。
●ホシテンスを飼育する―おとなしく飼いやすい。
ホシテンスはテンスの中でも浅い場所に多く見られるので、採集や飼育が容易です。餌はまずオキアミやアサリ剥き身などの生餌(なまえさ)にならしてから、配合飼料に餌付かせます。配合飼料に餌付いた後もアサリやオキアミなどさまざまな餌を与えるとよいです。
おとなしい魚なので、他の魚とも一緒に飼う事ができますが、気の荒いスズメダイやハマクマノミなどとはさけるべきでしょう。また小魚やエビなどは餌になってしまいます。
夜は砂中に潜って眠るので、底砂が必要です。砂の荒さはそれほど気にしなくても良いようです。
●仲間―世界中に約30種
テンスの仲間は世界中の暖かい海に見られます。およそ30種類が知られています。うち日本産は10種類ほど、どの種類も南日本や琉球列島にすんでいて、北日本では殆ど見られません。海外では食用となり、しばしば市場にも出ます。日本産ではテンスXyrichtys dea Temminck and Schlegelが美味しいといわれています(筆者はホシテンス以外のテンス属魚類は採集の経験がない)。