スズメダイの仲間は世界中の暖かい海からおよそ380種がしられています。この写真の黒いスズメダイは一見、普通のスズメダイの仲間に見えますが、この魚はスパイニークロミスAcanthochromis polyacanthus (Bleeker, 1855)といい、変わった魚なのです。
本種は、フィリピンからメラネシア、インドネシア、オーストラリアのグレートバリアリーフに生息しているもので、日本には分布していませんが、その姿や形は日本のスズメダイ属の魚とよく似ています。
スズメダイの仲間の卵は基質のものにうみつけられ、親は卵が孵るまで保護しますが、このスパイニークロミスだけは、卵が孵化した後も親が稚魚を守るそうです。それはアフリカの湖に生息するいくつかのカワスズメ科の種類を思わせます。
そしてもう一つ、このスパイニークロミスが変わっている理由、それは背鰭の棘にあります。
普通のスズメダイは背鰭棘数12~14本なのですが、本種のそれはなんと17本もあり、ほかの種類よりも多いのです。この多い背鰭棘が学名の由来にもなっています。写真からはわかりにくいのですが、背鰭には小さな白い線が入っているようにも見えます。幼魚は体側にも途切れた縦帯があったりしてきれいなのですが、成魚では一様に灰褐色・・・。