学会も終わった水曜日。関門海峡をこえて市立しものせき水族館 海響館を訪問。この水族館では地元関門海峡の魚、瀬戸内海の魚、日本海の魚を中心に色々と見せてくれるのですが、今回はその中でもちょっと変わった種類やお気に入りの魚、水槽などをピックアップしてご紹介したいと思います。
アカエイ
アカエイはあちこちの水族館でみられる一般種、ではあるのだが、ここのアカエイは見てもわかるように、全身の色素が抜けた神々しいアルビノ個体。よくぞここまで生き残っていたんだなあ、というような奇跡の魚。
ホシエイ
全身真っ黒で何が何だかわかりにくいのだがホシエイ。日本の温帯に生息するアカエイ科としては最大になるのではなかろうかという種。従来はアカエイ属に含まれていたがBathytoshiaという属に移動された。学名はBathytoshia brevicaudataとされたが、南アフリカやオーストラリア、ニュージーランドのものと北半球に生息するものではどこか違った印象を受けるため、日本産のホシエイの学名はおそらくBathytoshia matsubaraiとするべきなのだろう。
ホシエイ2匹
巨大なホシエイなのだが、水槽の壁面にへばりついて入館者たちを歓迎していた。水槽サイズには余裕があるようでホシエイが複数匹、のんびりと漂っていたり、ほかのエイと同じように底でたむろしていたり。アカエイとことなり、腹面縁は黄色っぽくはない。
スズキ
近海産の魚の展示にも素晴らしいところがある。このスズキもホシエイと同じ水槽に入っていたものであるが、スリムなフォルムが美しい。この水槽ではほかにもマダイ、ヘダイ、マアジ、イサキ、キジハタ、スギなど色々展示されていた。
ヒゲソリダイ
ドチザメといっしょにいるのはヒゲソリダイ。従来はイサキ科とされたが、近年は別科とされていることもある。金色の尾鰭、背鰭と臀鰭のそれぞれの軟条部はうす暗い水槽の中でも目立って見えていた。このヒゲソリダイも、意外なほど飼育している水族館は少ないと思っている(個人的には飼育されているのははじめてみたかも)。水槽にはほかにもカゴカキダイやキジハタ、珍しい近海産のゴマフエダイなども飼育展示されている。昔はヒゲダイなども飼育されていたが今回はお目に罹れなかった。
コイ
淡水魚水槽も充実しているかとおもいきや、魚の数は以前よりもだいぶ少なくなっていた。写真のコイやオイカワやカワムツ、フナ類は水槽のなかでも見られたが、イトモロコやギギ、ヌマムツなどはどこへ行ってしまったのだろうか。かわりになぜかニホンイシガメが2頭愛嬌を振りまいていた。しかしいつも思うのだが、この水槽のカメ、フタがないのに脱走したりしないのだろうか。気になるところである。
アケボノチョウチョウウオ...??
ここまでも十分にやばい生物を堪能したのだが、ここからはさらにすごい。サンゴ礁水槽にいたアケボノチョウチョウウオ、とおもいきやなんとスポットテールバタフライフィッシュである。アケボノチョウチョウウオよりも黄色が鮮やかで、尾鰭付け根の黒色斑もアケボノチョウチョウウオとはだいぶことなる印象をうける。上はイソギンチャクの一種で、ハマクマノミと共生している。イソギンチャクの触手には毒があり、魚が触れると麻痺してしまい、イソギンチャクに食べられてしまうのだが、この水槽のように遊泳のためのスペースが広くとられていると、深刻な事態にはならないのかもしれない。
クラカケチョウチョウウオ
クラカケチョウチョウウオは何気に初見のチョウチョウウオである。パンダの愛称で(狭い界隈ではあるが)人気も高いが、輸入されるのは小さく、飼育が非常に難しいという。しかしここで飼育されている個体はかなり大きく俊敏に泳いでいる。同じ水槽にはツキチョウチョウウオも泳いでいたが、ツキチョウチョウウオはオレンジというか、茶色というか、という感じの色彩をしており、容易に見分けることができるだろう。
ハクセンタマガシラ
ヨコシマタマガシラ属のハクセンタマガシラ。ヨコシマタマガシラ属でもフタスジタマガシラはまだ水族館では見られる種であるが、そのほかの魚は少ないように思われ、この属のフタスジタマガシラ以外の種で私が見たのは、他にいおワールドかごしま水族館のヨコシマタマガシラくらいである。そもそもイトヨリダイ科魚類が飼育展示される例は少ない。色は美しい魚であるため、やはり飼育がしにくいのだろうか。やや深場の種であるイトヨリダイ属などはそもそも飼育できる状態ではない個体も多そうである。背中の黄色い線が特徴的だが体側の模様も派手ではないが味わい深い。上品な色彩。
え!?ナンヨウアゴナシが!!
サンゴ水槽にはカクレクマノミやアカハラヤッコ、黄色いコガネキュウセンといったエース魚がそろうのはほかの水族館と同様。しかしここの水族館はほかの水族館と大きく異なり、なんとツバメコノシロ科のナンヨウアゴナシがいるのだ!日本産ツバメコノシロ属は本種をふくめ3種がいるが、私はこれでこの属3種すべてをみたことになる。この素晴らしい魚の出どころはどこなんだろう?
マメウツボ
地元山口県産のマメウツボ、なんていうヤバイしろものも。沖縄美ら海水族館にいるやばいキカイウツボ同様、のちに標本になるのだろうか。体側に大きな斑点があり、ニセゴイシウツボやヘリゴイシウツボと似ているとされたが、どうもこれらのウツボとは別グループのように思えてしまう。さて、この水族館といえばフグ目の展示なのだが、これはまた次回に続く。