あまりにも忙しくぶろぐを更新できていませんでした。そんな忙しい中ですが、この間、コバンザメなどと一緒に我が家にやってきたサメの一種をご紹介。メジロザメ目・ドチザメ科のエイラクブカ。
エイラクブカについてはかつてもこの「魚のぶろぐ」で紹介したことがある。2011年12月のおわりに愛媛県八幡浜市の沖合底曳網漁業で漁獲され水揚げされたもので、全長70~80cmほどの個体。この年は12月に、エイラクブカとはしばしば混同されているシロザメも見ており、この2種を比較すると、シロザメのほうはエイラクブカよりも顔が短いのかなとも思った。
上がシロザメ、下がエイラクブカ
シロザメとエイラクブカは非常によく似た外見をしている。シロザメよりもエイラクブカが細くてスマートなように見えるのだが、この2種の見た目同定は怪しい。とくにこの2種が含まれるメジロザメ目のうち、メジロザメ科・メジロザメ属の魚については横からの写真で同定できる人は絶対に信用してはいけない(ただしヨゴレ・ツマジロ・ツマグロ・スミツキザメはのぞく)。
上がシロザメの歯、下がエイラクブカの歯
エイラクブカとシロザメ、その最大の違いは歯にある。シロザメの歯は小さく鈍いが、エイラクブカの口にはあまり大きくはないが鋭い歯がのぞく。基本的にこの歯の形状というのはどのような生物を獲物として捕食しているかにより異なってくる。シロザメもエイラクブカも主に小魚などを捕食する種であり、食性の違いは大きくはなさそうである。それでも歯の形状が異なっているのは興味深い。エイラクブカはヒトを襲うことはまずない(そもそもやや深場に見られヒトと出会うことは少ない)。しかし釣りあげたときに針を外すのは注意したほうがよさそうである。なお吻の腹面にある黒い小さな点はロレンチニ氏瓶の開口部である。この器官により薄暗い深い海でも獲物を探すことができる。よく見るとシロザメとはロレンチニ氏瓶の分布域が異なる。
エイラクブカはさばいてみて食した。さばく前にはアンモニア臭はそこそこあったが、切り身にして、ムニエルにしたら全く気にならない。美味しく食べられるが、個性はすくなかった。同じドチザメ科のホシザメやシロザメなどは鮮度がよければ刺身でいけるという。日本産のドチザメ科魚類は5種からなるようだが、そのうちの4種を食したことになる。このぶろぐでもドチザメとシロザメを過去に紹介した。あとはホシザメとイレズミエイラクブカであるが、前者は底曳網漁業があるような場所では容易に入手できるであろうが、後者は琉球列島の深海から得られているもので、なかなか入手できないだろう。ちなみにツマグロエイラクブカという種も日本から得られているが、本種はドチザメ科とされたりメジロザメ科とされたりで、文献も見れていないのでここでは省略。
今回のエイラクブカも長崎県のマルホウ水産「魚喰民族」石田拓治さんより。いつもありがとうございます!