魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

クラカケベラ

2022年11月20日 15時46分28秒 | 魚紹介

昨日のマルクチヒメジに続いて、これも初めて入手した魚。スズキ目・ベラ科・タキベラ亜科・イラ属のクラカケベラ。

イラ属は属の標準和名にもなっているイラの頭部が特徴的であるが、このクラカケベラは丸っこい。口元には「牙」が見える。この仲間は英語でTuskfishと呼ばれているが、ベラの仲間はほかにもこのような牙をもつものが多くいる。本種は英語名でDagger tuskfishと呼ばれ、名前はその見た目からきているのだろう。またJordan‘s tuskfishと呼ばれることもある。これは本種の学名Choerodon jordaniにちなみ、人名由来である。タイプ産地は琉球、那覇の市場とされている。

クラカケベラの体側後方には暗色の三角形状の帯があり、その中に白色斑もある。黒い模様の中に白色斑があるということで、同じイラ属のクサビベラと一見よく似ているが、クサビベラではこの暗色域が広く、大きいと三角形に近い黄色域が現れる。

クラカケベラはイラや同様に熱帯性のクサビベラなどと比べると体高が低い。そのためKuiterのベラ図鑑ではイラなどとは異なる亜属のものとしている。この亜属にはほかにブラックブロッチドタスクフィッシュChoerodon zosterophorusが含まれている。ブラックブロッチドタスクフィッシュは体側に目立つ白色斜帯を有すること、体側後方に白色斑がないことによりクラカケベラと見分けることができる。ブラックブロッチドタスクフィッシュはインドネシアのカイ諸島、グレートカイ島が基産地であるが、北はフィリピンにまで産するので将来琉球列島で見られる可能性はあるだろう。両種ともに観賞魚として主にフィリピンなどから輸入されているが、数は多くない。また甲殻類や小魚、貝類などは捕食されることがあるので、一緒に飼育してはならない。イラ属は22種類がインドー西太平洋に生息し、大きいものは食用魚として利用される。日本においてもイラはそこそこ美味で煮つけなどにむき、沖縄ではこの属のシロクラベラは高級食用魚である。

今回のクラカケベラは煮つけでいただいたのだが、あまりきれいな写真ではなく、したがって煮つけの写真は掲載しない。このクラカケベラも沖縄の「どぅハタ」さんよりいただいたもの。いつも、ありがとうございます。

 

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フタスジタマガシラ

2022年11月19日 17時14分02秒 | 魚紹介

フタスジタマガシラがまたも我が家にやってきた。フタスジタマガシラといえば今年8月にもすでにこのぶろぐで紹介している。しかし、今回再び我が家にやってきたのでご紹介したい。

前回やってきた個体。2021年の2月に我が家にやってきたもの。体側を銛で突かれているが、その分、耳石はしっかり破壊されずに残っているのでうれしい。ただ写真は頭部や背中が暗くなってしまっていて、微妙な色が出ていない。でもそれでも眼の上のほうを通る線が白っぽいのがわかる。産地は石垣島の近海である。

一方でこちらの個体はこの間11月に沖縄本島で釣られたもの。光の調整は難しいのだが、眼の上に黄色の線があるのがわかる。これは幼魚期の「名残」といえるだろうか。本種は幼魚が黄色っぽい色彩であるが、それの名残といえるだろう。また体サイズも、前回の個体と比べて小さいような印象を受ける。

一方前鰓蓋の鋸歯状突起は以前の石垣島産と比べ明瞭でするどい。大きいとこのような鋸歯状突起があまり明瞭でなくなっていく可能性もある。

本種の含まれるイトヨリダイ科は、主にやや深い砂泥底の海底に生息しているものと、サンゴ礁に生息するものに分けられるように思う。前者にはイトヨリダイ属とタマガシラ属、後者には本種を含むヨコシマタマガシラ属と、1属1種のScaevirsが知られ、種類によってはどちらにもなりうるのがキツネウオ属といえるだろう。イトヨリダイの仲間やタマガシラの仲間は水中写真ではほとんど見ることができない。日本のソコイトヨリなどはまだ水中写真などもあるが、海外のものはネットサーフィンしても見当たらない。内湾の50mくらいの泥底、こういうところの魚の写真撮影も面白いと思うのだが。

ということで、フタスジタマガシラの塩焼き。イトヨリダイの仲間は身がやわらかく、塩焼きにするのが一番美味しいかもしれない。ただ以前に購入したイトヨリダイの刺身は絶品であった。ただこの仲間はあまり市場で見かけないように思い、残念である。今回は沖縄の「どぅハタ」さんから頂いたもの。前回の個体は石垣島の大濱さんより。お二人ともありがとうございます。

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マルクチヒメジ

2022年11月18日 23時20分25秒 | 魚紹介

この間のナミスズメダイと同様、これも初めて入手した魚。スズキ目・ヒメジ科・ウミヒゴイ属のマルクチヒメジ。

ヒメジ科の魚は種類が多いが、特に近年インドー太平洋域から多くの新種記載、もしくは種の復活が行われているグループである。この属はヒメジ属などと比べて大型になるもの多くいて、このマルクチヒメジは50cmを超えるくらいにまでなる。本種は下顎のひげがやや長く鰓蓋後縁下を超えること、吻がややとがっていること、オジサンやフタスジヒメジのような暗色横帯がないこと、オオスジヒメジやオキナヒメジのように尾柄付近に暗色斑がないことなどによって、ほかのウミヒゴイ属の魚と見分けることができる。

第2背鰭、臀鰭、尾鰭にはこのように美しい模様が入る。この臀鰭の模様はやや小型種のオジサンに近いところがあるように思う。オジサンは全長20cmを少し超えるくらいであるが、下顎のヒゲが長く、マルクチヒメジ同様に前鰓蓋骨後縁をはるかに越える。

マルクチヒメジは色彩のバリエーションが多い。トップ写真のように赤紫色のものや、上の写真のように黄色いもの、青みを帯びた色彩で体に黄色い模様があるもの、全身灰褐色のものなどが知られている。黄色い色彩のものは観賞魚店でも見られそれなりに人気があるよう。ただし成魚になってもこの色彩を維持できるかは不明だ。この種は先述のようにこの属の中でもオオスジヒメジなどとならんで特に大きくなるものであるため、食用として利用されており、市場にも出ることがある。沖縄ではヒメジの仲間は「カタカシ」と呼ばれ、それなりに値段がつく。本種は伊豆半島以南の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島、海外ではインドー太平洋の広範囲に生息し、その分布域には紅海とハワイ諸島も含まれる。なお、今回のマルクチヒメジは煮つけにして美味しくいただいた。ほかにも刺身や鍋物、焼き物など様々な料理に使うことができる。ヨーロッパ近海ではヒメジ科の欧州産種であるレッドマレットなどは重要な食用魚であり、料理には欠かせないという。日本でもヒメジ科の大型種であるホウライヒメジやオキナヒメジなどは「メンドリ」と称され、ヒゲも生えていることから縁起の良い魚とされてきた。

今回のマルクチヒメジは沖縄本島近海産。「どぅハタ」さんにより釣られ、送っていただいたものである。いつも、ありがとうございます。

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オグロトラギス

2022年11月17日 23時09分19秒 | 魚紹介

サンゴ礁に生息する普通種であるが、久しぶりに入手できた魚。スズキ目・トラギス科・トラギス属のオグロトラギス。

オグロトラギスには従来Parapercis hexophtalmaという学名があてられていたが、この学名のものはインド洋の特産種とされ、従来この学名で呼ばれていた種は現在4種が知られており、オグロトラギスの学名はParapercis pacificaとなっている。学名通り西太平洋を中心とした分布域である。ほかParapercis xanthogrammaがフィジー、トンガ、サモアなどに、Parapercis queenslandicaはオーストラリア周辺やニューカレドニアなどに分布するとされる。

オグロトラギスの雄

オグロトラギスの雌(やや小さな個体)

この仲間は雌雄で頭部の模様が異なる。大体雌は黒色の点があり、雄は細い線が多数入っている。ただし本種ではそれがなく、頬下方にM字または「へ」の字、アーチ状の線が入っているのが特徴。雌はこの仲間はどれも黒い小さな点があるが、それらの位置などで見分けることができる。ただし、写真からの同定は難しいことが多い。雌は前回(2009年)に入手したもの。そのときの個体もこのぶろぐに掲載している。石垣島産の個体。

尾鰭には「オグロトラギス」の名前の由来になっている巨大な黒色斑が入っている。その黒色斑の後方に大きな白色斑がなく、この個体のように少し白っぽくなることにより、よくにたワヌケトラギスと見分けることができる。またワヌケトラギスは頬部や頭部の斑紋もオグロトラギスと大きく異なるので見分けるのはそれほど難しくない。沖縄などサンゴ礁の浅瀬にすむのはオグロトラギス、ワヌケトラギスとダンダラトラギスが多いように思われ、たまにヨツメトラギスやマダラトラギスなどが混ざる。

今回のオグロトラギスは煮つけにして美味しくいただいた。トラギスの仲間なので、煮つけ以外にも、焼き物、揚げ物などにもできるだろう。ほとんど市場には出回らない魚であるが、この科の魚には美味しいものが多い。ベラなどに厳しい評価を下す「沖縄さかな図鑑」では「市場価値はなく、水揚げされることもないが、食べることはできる」とされている。沖縄名では「すなふーやー」だそうだ。

食用になるほか観賞魚としてもまれに流通することがあるが、家庭の海水魚水槽というよりは水族館向けであろう。20cmほどになった成魚は迫力がある。今回のオグロトラギスも前回のナミスズメダイやキツネウオと同じく、沖縄在住「どぅハタ」さんより。いつもありがとうございます。

 

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ナミスズメダイ

2022年11月16日 15時03分43秒 | 魚紹介

今日は先日沖縄からやってきた魚をご紹介。スズキ目・スズメダイ科・クラカオスズメダイ属のナミスズメダイ。

ナミスズメダイはスズメダイの仲間で、体高がありそのぶんがっしりしてみえる。本種の体色は背中が灰色であるが、その灰色は海の中では紫色に見える。腹部や腹鰭は黄色くなっていて、背鰭と臀鰭は暗い色だが、後方は白色、透明である。

クラカオスズメダイ属は高い体高が特徴的なスズメダイの仲間で、日本に4種類が生息している。このナミスズメダイのほか、クラカオスズメダイ、ニセクラカオスズメダイ、そしてヤマブキスズメダイである。クラカオスズメダイはこのぶろぐでも以前取り上げたことがある。ニセクラカオスズメダイは琉球列島でもやや珍しい種とされている。ヤマブキスズメダイはクラカオスズメダイ属としてはやや深いサンゴ礁域に生息しているもので、なかなか出会えない珍しい魚である。一方海水魚店で「ヤマブキスズメダイ」とされているのは、イエローリップダムゼルという別種であるので注意が必要。イエローリップダムゼルはインドネシアやフィリピンの浅いサンゴ礁に生息しているためよく輸入されているが、ヤマブキスズメダイは最近ほとんど輸入されない。可能性があるなら沖縄便くらいであろうか。なおイエローリップダムゼルの学名はまだついていない。近縁のインドネシア産種バツナズダムゼルとの詳しい比較が必要のようである。

ナミスズメダイもヤマブキスズメダイ同様、若干水深のあるサンゴ礁域に多く生息している印象がある。水深45m以浅で見られるようだ。ただし本種は浅場にも見られる。日本では琉球列島以南で見られるが、幼魚は八丈島や高知県柏島などでも見られるという。海外では台湾、東インドー西太平洋のサンゴ礁域に生息する。従来はインド洋や紅海にも分布するとされていたが、これらは現在別種とされている。背中が緑色っぽくなり、腹部は黄色ではなく白くなる。ただし幼魚では鰭などが黄色くなるようで、ナミスズメダイの幼魚と見分けるのはちょっと難しいかもしれない。

ナミスズメダイはスズメダイ科としては大型であり、若干消費されているようである。今回は塩焼きにして美味しくいただいた。脂がよくのりそこそこ美味である。長いこと入手したかった魚だが、ようやく今回入手できた魚である。今回は沖縄在住の友人、HN「どぅハタ」さんより。いつもありがとうございます。

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