いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

今日の看猫 2013/2/3, 蠅、そして、卑下は自分でするもの

2013年02月03日 18時28分31秒 | ねこ

▼ 今日の看猫 2013/2/3

■ 今日、おいらの部屋の蠅が死んだ。

越冬していた蠅。いつもは窓のサッシにいた。昨日、床をのろのろ這っていた。そして、今朝、死んでいた。

● 卑下は自分でするもの (ひげはじぶんでするもの)

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週末のんべんだらりんと読んでいた本、村上隆・『創造力なき日本』にあった。

”社会の中で誰からも卑下されるポジション”

ここで、社会の中で誰からも卑下されるポジションにいるべきだとされているのは、現在美術の芸術家たちだ。芸術家とは才能あふれるがゆえに世間に卓越してその特権性を認めさせるのではなく、資金提供者に対し徹底的に忠実にその要求をお聞きだてして、作品を納品せよ!ということだ。ただし、ここで忠誠を尽くすのは顧客であり、大衆ではないことに注意。

そして、元に戻って、”社会の中で誰からも卑下されるポジション”

おそらく、まちがい。  卑下とは、自分で自分を貶めることである。

だから、「自己卑下」とかいう言い方は変だろう。

と、思っていたが、自分ではなく他人を貶める場合にも「卑下」が使われる例が近代以降発生しているらしい。

「おのれをいやしめる」という意味の用例は平安時代から現代まで満遍なく見られるのに対して、「他者をいやしめる」という意味での用例は、現時点では『西国立志編』『抒情詩〈国木田独歩〉』という明治期の例よりさかのぼれるものは見あたらない。

・・・・
だ が、そうは言っても現時点では文学作品や評論、新聞などでは「自己をいやしめる」というもともとの意味で使われた例の方が依然として優勢であると考えら れる。そのため 『日国』のような古語から現代語までを網羅した大型の国語辞典は別にして、通常の国語辞典では「他者をいやしめる」という意味は載せてい ないのではないだろうか。
 ただ、今後「他者をいやしめる」という意味が広く使われるようになれば、その意味を無視することはできなくなるであろう。動向を注意深く見守りたい語のひとつである。日本語 どうでしょう? 第60回   「卑下」する対象は?

 

で、 村上隆。『創造力なき日本』、おもしろかった。 これは教育論で(も)ある。 そして、最近興隆しているブラック企業の経営者(関連愚記事; 続、他人を欺かんと欲するものはまずは自らを欺け?...   )と言っていることが紙一重であることもスリリングだ。ブラック企業とも言えるし、ふた昔前のカルトとも通じてしまう。さらには、村上隆の主張する「とにかく徹夜でそれでも技能を発揮せよ!」とは最近、採用基準なる言葉で大衆にも 広く喧伝された某コンサルのカルト性にも通じる?もっとも、村上隆の『創造力なき日本』には村上のアート・インダストリー[1]会社である「カイカイキキ」の採用基準は特に明記されていない。あるとすれば、むしろ、密教的リーダーシップだ!

僕の会社は、完全なる垂直型命令体系なので、命令絶対化が必要です。「勝手なことはするな!」ということです。(中略)

ただそこで、指示と違ったことをして許される場合があるとすれば、指示よりもいいものに仕上がっていたときに限っての話です。そんなときには褒めることはしませんが、文句は言わずに黙って見逃す可能性はあります。


出典

今の若い人の本当の不幸は就職口が容易に得られないということばかりではなく修業の場が得られないことだろう。大学はじめぬっぽんのガッコは全然修業の場ではない。学校で修業(しゅぎょう)とはお 角 門違いだろうという正論には、ぬっぽんのガッコでは教育がなされておらず、ぬっぽんずんが成長する契機となっていないと御指摘しよう(関連愚記事;無駄な公共事業としての肥大化した大学院教育)。

村上の指摘するは「社会性」。ガッコのセンセに一番欠けてるものだろう。もっとも、最近は、ガッコのセンセが経済学の教科書にしかいないと考えられてきた「最大利益を求めて行動する合理的経済人」だとわかったが。恐るべし、教科書!

まあ、そういう状況なので、酔狂で、いささか、また、ひそかに。みずからを恃むところ頗る厚い人は、「カイカイキキ」でがんばってほしいと無責任に思った。

関連愚記事;駅を出ると古めかしい典型的ヨーローッパの街並み。でも、散歩をはじめると窓々に古い石の建物には似つかわしくないシュールな、でも見覚えのある絵柄が遠くから視界に入ってきた。村上隆じゃん。


 [1] 特に解説で印象深かったのは、オランダでは近世、painting industryが発達したのである、との文句。 industry! (関連愚記事)