このままでは、安倍政権がTPP交渉参加を決断しそうな気配である。最初から日本には、安全保障の面で引け目があり、それを解決しなければ、対等な交渉など無理なわけで、いくら自民党であっても、徐々にボルテージが下がってきている。態勢を挽回する意味においても、学ぶべきは吉田松陰の攘夷の精神である。萩の人から送ってもらった本に、福本椿水の『松陰余話』があり、松陰の攘夷の思想について、「当時の東洋状勢として、武力を背景に理不尽に諸国を侵略せんとする非礼の外夷に対し、独立国家の体面上、一時これを攘い斥け、対等の地位において和親条約を結び、更に海外に進展すべきであると主張された」と解説している。嘉永6年に米国軍艦が江戸近海に停したときには、松陰は主戦論者であった。武力による威嚇に対して、憤りを覚えたからだ。神奈川条約を調印した時点では、松陰も和親論者に転じたかのように見えたが、下田条約が締結されてからは、前以上に攘夷論者となったのである。徳富蘇峰は『吉田松陰』において、攘夷論者としての松陰の胸の内を、次のように推察している。「このままにして開国するときにおいては、国家の元気索然として、ついにまた奮わず、この膝ひとたび屈してついにまた伸びず、ゆえに一時逆流に立ち、天下の人心を鼓舞作興し、しかるのちおもむろに開国の国是を取らんと欲したるのみ」。平成の世と変わりがないのである。今求められるのは、第二、第三の吉田松陰なのである。
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