人間の命を軽んじるつもりはないが、それにしても今の日本は異常である。癌が治療可能になりつつあるせいか、最先端医療への期待が過熱している。そして、世の中全体の話題の中心は病気である。現役をリタイアした団塊の世代などは、一日でも長く生きるために、大変な努力している。その気持ちは分からないではないが、アメリカの保険会社のCMが流れた後で、難病のことがテレビで取り上げられたりすれば、少しは疑ってかかるべきだろう。公的保険が効かなくて、一回あたりの治療に最高で何百万もかかっているのは確かだ。それでも治したい人たちがいて順番を待っているのも。それを見透かすかのように「国民皆保険の制度は時代遅れになった。最先端医療を受けるためには、外資系の保険会社に加入するしかない」とマスコミがPRを買って出ている。金があるかないかで余命が決まってしまう。そんなことがあっていいのだろうか。かつての日本人には、互いに助け合おうとする精神があった。これに対して、アメリカニズムは弱肉強食の容認であり、勝組と負け組が生まれても、それが自然の摂理なのである。セーフティネットによって、最低の医療は受けられるとしても、最先端医療は夢のまた夢である。難破した船から逃げ出そうと救命艇が降ろされたが、定員に限りがあるので、下々の者ではなく、金持ちから順番に乗せるというのだ。それで本当に日本国民はいいのだろうか。
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