今のアメリカを支配している者たちは、民主主義を理解していると自負している少数者である。アメリカという国家を統治できるのは自分たちであると、勝手に思い込んでいるのである。ノーム・チョムスキーは『覇権か生存か―アメリカの世界戦略と人類の未来』(鈴木主税訳)で、そのことについて触れている▼ウッドロー・ウイルソンが大統領であった時代から、それが欧米のエリートの共通の考え方になった。強制的な手段は公益に反することもあり、「世論と国民意識を操作する」という方法が用いられるようになったのだ。そこで登場したのが巨大広報産業なのである。ウォルター・リップマンは「一般大衆は、本来の場所に押しとどめておかなければならない」とまで言い切ったのだという。それはまさしく、少数による革命を正当化するレーニン主義と一緒である▼グローバリズムに抗するトランプの敗北を決定づけたのは、ネットを含めた巨大広報産業であった。格差社会の中で、勝者であるエリートの代弁をしたのだ。その者たちは、生産現場の拠点がアメリカから失われたために、勝ち組に反発を抱くトランプ支持者の対極に位置する。トランプがプロパガンダを駆使したのではなかった。逆に4年間にわたって権力の座から遠ざけられたエリートたちが編み出した戦術なのである。チョムスキーが見抜いていたように、いくらリベラリズムであろうとも、その権威の前に膝を屈してはならないのである。
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