景気が回復途上にあるのに、あえて増税をするのは消費者マインドに悪影響を及ぼすだけである。消費税を10%に上げるのではなく、それを見送った方が得策ではないだろうか。軽減税率とか年金が少ない人に給付するとかいった議論は、無理にごり押しをするための正当化でしかない。それよりも大企業が内部留保している資金を活用させるべきだ。さらに、TPPなどで国際化は避けられないとしても、その衝撃は最小限におさえなくてはならず、日本の今後の経済運営にあたってはリベラルでなくてはならない。宇沢弘文が述べていたように「社会的共通資本」の整備が急務なのである。宇沢は「社会的共通資本」を「一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能とするような自然環境と社会的装置を意味する」(『経済学と人間の心』)と書いており、それは自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本の三つからなる。念頭に置かれているのは自然を守ることであり、土木工学を含む社会資本の整備であり、教育、金融、医療、司法、行政などをカバーする制度を資本と考えるのである。このままでは新自由主義のアメリカのように、さらに格差社会が深刻化してしまう。困窮者への所得の保障よりも、人間として生きやすい社会にする方が負担も少なくて済むはずだ。安全保障ではタカ派であっても、経済はリベラルでなければならないのである。
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