巡航ミサイルのトマホークをアメリカから購入することを政府が検討している。そのニュースがマスコミから流れたことで、様々な憶測が飛び交っている。多くのネット民は、中国による台湾侵略が切迫しているため、岸田内閣も重い腰を上げざるを得なかった、という見方をしている。
これまで政府は、三菱重工業が開発した12式地対艦誘導弾の改良型を、敵の射程外から発射する「スタンド・オフ・ミサイル」として量産する計画を進めてきたが、2026年度以降の配備ということで、当面はトマホークに頼らざるを得ないからだろう。トマホークの射程は1300キロ以上で、これによって我が国は自前の反撃能力を手にすることになり、やられたらやり返すという抑止力が強化される。
さらに、政府は台湾有事に備えて、自衛隊の部隊や装備を迅速に輸送するために、優先使用契約を結ぶ民間船舶の数を2隻から6隻に増やす方針を固めた。先島諸島の住民の避難にも活用されることになりそうだ。
あまりにも唐突感があるのは、岸田首相の説明が足りないからである。もはやここまでくれば、北朝鮮にとどまらず、中国も我が国にとって重大な脅威なのである。
政治家は言葉で国民を説得しなければならない。それを怠っているから、なおさら右往左往しているように思われるのではないか。その一方で、財務省などは、自衛隊の定員の削減を主張しているわけだから、その場しのぎのようにみえてしまうのである。
論語に「民はこれに由らしむべし。これを知らしむべからず」という言葉がある。金谷治の訳注では「人民は従わせることはできるが、その理由を知らせることができない」という意味であるが、国民の多くは、東アジアが緊張していることを理解している。岸田首相は今何が起きつつあるのか、国民に向かって正直に語るべきなのである。