今度はパリで無差別テロが起きた。テロリストは殉教者としての死を望んでおり、手が付けられない。しかし、ユーラシア大陸のほとんどは暴力的な世界であり、その東西の境界領域で深刻な緊張が生まれている。そのことを櫻田淳が去る12日にアップされた産経新聞の「正論」に書いていた。これまでの日本は、オランダ、イギリス、アメリカというような海洋国家と密接な関係を築いてきた。それは大筋においては間違いではないだろう。しかし、櫻田の議論は梅棹忠夫の『文明の生態史観』に立脚した見方で、単純に民主主義国家と非民主主義国家とを区別する公式主義である。いくら海洋国家として利害が一致するアメリカとの同盟を強化しても、アメリカ頼みでは日本は中共にいつの日か呑みこまれてしまうだろう。テロにも日本は脆弱である。かろうじて日本列島が海で守られていることや、外国人がまだ少数派にとどまっているために、治安が維持されてきただけである。それを無視して、海洋国家だからアメリカと組めば安心だという議論は、あまりにも短絡的である。日本がどのような自主防衛力を増強するかを、真摯に検討すべきなのである。集団的自衛権の行使は当然のことであったとしても、それだけでは万全ではない。まずは一国の主権と独立を守り抜く決意が、憲法に書き込まれなければ、アメリカとの対等な関係は築けないのである。櫻田の限界は日本の独立に向けてもう一歩先に踏み出せないことだ。アメリカへの期待が大き過ぎるからだろう。
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