かすかな希望が生まれつつある。与野党を超えて「人権外交を超党派で考える議員連盟」が去る6日に設立したからだ。中共やミャンマーでの人権弾圧は、まさしくヒトラーやスターリンが行ったことと大差がない。そんなことが許されてしまうのであれば、間違いなく世界は全体主義化し、日本とてその例外ではない▼当面の目標としては、外国での人権侵害に関与した個人・団体に制裁を課す「人権侵害制裁法案」を今国会に議員立法で提出し、成立させることを目指している。政経分離を語ることで、中共などの過酷なジェノサイドを容認してきた日本企業も当然の如く対象となる。この法案に賛成するか反対するかは、国会議員にとって一つの踏み絵となるはずだ。いくら与党自民党の国会議員であろうとも、派閥の領袖に意向に従って反対するようなことがあれば、選挙での敗北は免れないだろう。中谷元・元防衛相と国民民主党の山尾志桜里国会議員が共同代表になっているが、役者はそろっており、実際に法案が通るかどうかである▼これによって本当の国民の敵は誰であるかがはっきりする。それは同時に、全体主義を容認する一部の日本国内の風潮に歯止めをかけなくてはならない。ハンナ・アレントが恐れていた事態は民主主義国家においても無縁ではないからだ。「全体主義運動は、一貫性の虚偽の世界をつくり出す。その虚偽の世界は現実そのものよりも人間的心情の要求に適っている」(『全体主義の起源』寺島俊穂訳)からである▼全体主義を甘く見てはならない。自由を与えられた民衆がそれに耐えられず、得体のしれない特定の個人や団体に振り回され、世界を破滅に導こうとした体験を人類はすでに幾度も体験しているおり、私たちは今こそ目を覚まさなくてはならないのである。
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