日本のリベラルのまともな意見を取り上げるのは、それだけ日本が危機に瀕しているからである。山尾志桜里、細野豪志らがネトウヨに屈したと罵倒するのは論外である。事態はそれだけ深刻になっているからだ。東浩紀の主張もそれと同じである。保守を名乗らなくても、教条的左翼とは一線を画している▼『哲学の誤配』を読んでみると、保守派の私たちと問題意識が共通しているのにはビックリした。今の選挙制度には欠陥があって、ろくな人間が政治家にならない。その現実を直視しているからだ。民主主義を補完する意味で、人々の生活履歴を集積したデータベースを適正に解析し「社会の集合的な無意識」を可視化することを主張している▼「民主主義と無意識の相互補完」については、以前からあった議論である。大原康男は『天皇ーその論の変遷と皇室制度』において、和辻哲郎の『国民統合の象徴』を取り上げ、「わが国の歴史において、天皇は『同一の言語、習俗、歴史、信念などを有する文化共同体』である国民の『全体意志』の表現者であったと規定」している▼東のいう「社会の集合的な無意識」という言い方は、データベースによる可視化であるとしても、和辻と問題の立て方は同じなのである。無意識に受け継がれてきたものを数量化するかどうかの違いである。付和雷同的に物事を決める左右のポピュリズムに対抗するには、時代によって変遷するとはしても、日本人の無意識を掘り下げて、核となる部分を探し当てる必要があるのである。
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