創作日記&作品集

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連載小説「Q」25

2020-05-03 06:08:29 | 小説
連載小説「Q」25
ポストから朝刊を取り、居間兼台所に帰る。
居間の窓を開け放す、同時にクーラーのスイッチを入れる。
次にテレビをつける。
次の仕事は朝食。
トースト一枚(炭水化物)、冷凍唐揚げ(蛋白質)、牛乳(総合)、卵(総合)、レタス一枚(野菜)と梅干し一つ。
梅干しは『低ナトリウム血症』の恐怖が残っているからだ。
正常値になってから四年以上も経つのに、お守りみたいなものだ。
これが順平の朝食である。
トーストがご飯か餅に変わることもあるが、他は殆ど変わらない。
十時過ぎになると、コープが届けてくれた夕食の弁当を取りに行く。
門扉の中に、発泡スチロールの箱に配達員が入れてくれる。
配達員とかち合わないように時間を少しずらしている。
だが、時にはかち合う。
相手も突然出て行くと驚く。
三十歳くらいの女性だった。
初めて顔を見た。
名刺をもらった。
殆ど人と会わないので新鮮な対面だった。
パートで働いている。
子供を保育所に預けて、仕事の帰りに子供を迎えに行く。
フルに働けば税金が高くなるので上手に計画的に働いている。
短い時間に早口で喋った。
大変だと思うが活気があった。
順平には活気がない。
昼はうどんを食べる予定だ。
うどんは安い。
一玉十七円で売っている。
ご飯も安いのでおにぎりにすることもある。
何しろ主食は安い。
夜は、コープの「健康御前(糖尿病食)」。
これが一番高くつく。
これで順平の命は保たれている。
入ってくるもの出ていくもの。
その差が生きるためのエネルギーなのだろうか。
今日もそんな順番で過ぎていくだろう。
連載小説「Q」#1-#20をまとめました。