創作日記&作品集

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連載小説「Q」45

2020-05-23 06:51:48 | 小説
連載小説「Q」45
二〇二〇年は誰も予想もしなかった事が起こった。
パンデミックである。
順平にとって初めての戦争だった。
武漢で未知のウィルスが流行っているらしいとのニュースから、人から人への感染が確認されたと言うニュースになった。
一月末には、武漢市内に、感染者の治療に特化した病院を新設しているという。
建設期間はわずか十日間で、病院施設が稼働する見通しだと報じられた。
大国はたいしたものだと感心した。
廊下に溢れる患者。
防御服に身を包んだ医療チーム。
管につながれた患者の群れ。
異様な光景だった。
感染者数と死者の数が毎日更新された。
ロックダウン(都市封鎖)という映画のような言葉が踊った。
映画の世界が現実になったと順平は思った。
しかし、その時はまだよそ事だった。
一月二十八日、順平が住んでいる奈良県でバス運転手の感染が確認された。
新型コロナはほん近くまでやって来た。
「おさまってくれ」。
「日本に来るな」。
「あたたかくなったら消えるよ」。
順平の楽観的な願いはことごとく外れた。
クルーズ船ダイアモンドプリンセス号は二月三日、横浜港に入港した。
巨大な舟が、新型コロナウィルスの影のようだった。
豪華客船が新型コロナウィルスの温床になった。
これさえなければと順平は嘆いた。
同じようなことが、二〇一一年にもあった。
原発事故さえなければと順平は嘆かなかったか。
NHK特設サイト『新型コロナウイルス』とヤフーニュースを日に何十回と閲覧する日々が続いた。
連載小説「Q」#1-#40をまとめました。