創作日記&作品集

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連載小説「Q」32

2020-05-10 06:23:46 | 小説
連載小説「Q」32
「君は、エヌはちはちベーシックって知ってるか?」
 光一は唐突な質問に順平の顔を見た。
「知りません」
「プログラムを組んだことは?」
「ないです」
「そんな必要あらへんもんなあ」
「田代さんはコンピューター関係のお仕事をされていたのですか」
「いいや、薬剤師や。算盤が出来ひんよってパソコンを使うたんや」
「算盤は公文(くもん)で習いました。小学校一年の時です。ひと月で止めましたが」
「へえ、公文は算盤もやってるんか。公文先生には、高校で数学を習(なろ)た」
「公文先生?」
「公文式の元祖や。あの時から小学生に微積分を習わしてる言うてたなあ。牛乳瓶の底みたいな眼鏡かけてた。答えが出たら、方法は何でもええ言うとった」
 光一は黙って聞いていた。
「こんな話おもろいか」
「勉強になります」
 ――マニュアルにあった。客が昔話を始めたら真剣に聞くこと。
同意を求められたら、「勉強になります」と言うこと。
連載小説「Q」#1-#30をまとめました。