創作日記&作品集

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連載小説「Q」51

2020-05-29 06:41:51 | 小説
連載小説「Q」51
いつになったら、この事態が過去形になるのだろう。
まだ終わっていない。
始まりかもしれない。
「お尻の穴が痒い」と女の尻が揺れ、女が叫ぶコマーシャルを見ていると、コロナよりも異常な気がする。
なんという国に住んでいるのだろう。
順平がよく知っている梅田の交差点は人影がまばらになった。
「家にいてください」と吉村知事が繰り返し、「スティホームと」小池都知事は語りかけた。
テレビ画面の左右の端に一人ずつニュースキャスターが映り、間に二三人がリモート登場するのが普通になった。
ドラマの制作が中止された。
順平が楽しんでいた大河ドラマも六月には中断されるという。
「半沢直樹」も今だ放送されない。
過去のバラエティが放送されている。
みんな密着している。
これが日常だとすれば、日常が異常だったのかもしれない。
本当に日本人は三密が好きなんだ。
大声で喋り笑っている。
一方、西田敏行がこう言っている。
私たちは「彩りに過ぎない」。
俳優の生の声が聞こえてくる。
今、順平は彩りのない世界に住んでいる。
世界の感染者四七七万人超 死者三一万人超 。この町の十倍以上の人間が死んでいる。
作者もその渦中にいる。
愛する読者もそうだろう。
順平は一日中新規の感染者を追っている。
いい加減に止めなければと思うのだが。
新しい情報はそれしかない。
今日は何人になりそうだ。
死者の情報は目にとめない。
人間は勝手なものだと思う。
まだ順平の周りで感染者はいない。
次ぎに奈良県の情報に注視する。
どこで発生したか。
感染源は? 
病状は? 
奈良県のホームページで辿ることが出来る。
スーパーのパート。
近くのスーパーかとドキリとする。
情報に一喜一憂する。
五月下旬、急に新規の感染者が減り始めた。
気になっていた野球の梨田さんが退院したことを知った。
赤の他人だが、嬉しい。
「願わくはこのままコロナは消えて欲しい」と順平は神に祈った。
二波三波とテレビは言い出している。
順平は耳に栓をしている。
 *
【作者より】
唐突で申し訳ないですが、物語は五年後に飛びます。
連載小説「Q」第二部の始まりです。
いよいよ「Q」が登場します。
連載小説「Q」第一部をまとめました。