創作日記&作品集

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連載小説「Q」50

2020-05-28 06:22:54 | 小説
連載小説「Q」50
受診科に電話がつながった。
順平はこう言えばいいのだ。
「コロナが怖いから、薬だけ貰えませんか」
話は簡単に通じた。
かかりつけ薬局を聞かれた。
近所のウエルシア薬局のホームページを用意していた。
一回だけ痔の軟膏を出して貰ったことがある。
痔の手術(正確に言えばジオン硬化療法)どうでもいいことだが。
順平はかなり興奮していた。
妻がサポートしてくれる。
医師に聞いてからまた電話をするという。
「いけそうや」。
鬼の首でも取った気分になった。
その日の夕方電話があり、診察日の十六時三十分から十七時に医師からの電話でオンライン診察。
万歳したい気分になった。
内分泌科は行くことになった。
速攻に行って速攻で帰ってくる。
妻が車で送ってくれることになった。
妻だけが頼りだ。
診察日の十六時三十分きっかり看護師から電話がかかった。
次に医師に変わった。
いつもの声だ。
順平は卑屈に「お手間を取らせました」と繰り返した。
問診が終わり看護師から事務手続きの説明を聞くと、また、「お手間を取らせました」と繰り返した。
相手の電話が切れるのを確認して、拝むように受話器を置いた。
次の日ウエルシア薬局に薬をもらいに行った。
電話では中年の男だったのに、べっぴんさんの薬剤師が出て来た。
髭を剃っていけばよかったのにと順平は悔やんだ。
十数年前は、順平も美人の薬剤師に囲まれていたのだ。
本当に遠い昔のような気がする。
定年後一秒も働いていない。
そんなことを自慢するなと怒られそうだが。
連載小説「Q」#1-#40をまとめました。