と言っても、映画館で見たわけではないので、どれもちょっと前の映画になるが。
■バルトの楽園
ラストで演奏されるベートーベンの「第九」はものすごく感動的。
これまで「第九」にはそれほど興味はなくて、年末になると「第九」を演奏するのを、ちょっと冷めた目で見ていたのだが、大いに見直した。物語自体もヒューマニズムにあふれていて、心地よい。
■善き人のためのソナタ
反対に、この物語は旧東ドイツの社会がいかに人間性を抑えつけるものだったかを描いている。まさに、「1984年」の世界。
核となるのは24時間監視される作家と、監視する体制側の人間。描き方によってはかなりスリリングな展開になるはずが、これはむしろ淡々と話が進行する。
そして、監視する側の人間がいつしか……。
東ドイツが崩壊して何年か後。作家はシュタージの記録を見る。
ラスト、元シュタージの監視者は、ふとしたきっかけで、作家からのメッセージを受け取る。その彼の表情がたとえようもなくいい。
この監視者役の俳優、見ている間じゅうずっと「ユージュアル・サスペクツ」のヴァーバルを思い出させた。
■マリー・アントワネット
タイトルのとおり、これはマリー・アントワネットを描いた映画だが、彼女の宮廷での幸せな(こういう生活がほんとうに幸せかどうかは疑問の余地が大だが)日々だけに絞っている。
だから、「善き人のためのソナタ」と対照的に、断頭台に散る結末までしっかり描かずに、ヴェルサイユを去るシーンで終わりにしたのはとてもよかったと思う。
キルスティン・ダンストはあまり好きな女優ではないが、アントワネット役は彼女にぴったりだ。