2014年7月2日(水)
夕べO君と、久しぶりに食べた。
凄いんだ、これ。
能書きは帰宅後に。

帰宅後の能書き。
初めて食べたのは、もう何年前になるだろう。
O君が「ミルクワンタン、食べないか」と言うので、有楽町のガード下をけっこう奥まで入って行った。油じみた狭い店内で、そのものがドンと出てきた時の、何と言ったらいいかあれはやっぱり感動だよな。
でっかい器に真っ白な温ミルクが満々、そこにプカプカと浮き沈みする、これも真っ白で大きなワンタンたち。誰がこういうもの考えるんだろう、子供の頃、御飯にミルクかけて食べたのを思い出しながら、美味しいというのかすごいというのか、「食べた」という壮挙でお腹いっぱいである。
めったに有楽町界隈に行かないし、他所でお目にかかるものではないから、すっかり思い出の一コマになっていた。
そこへまたしてもO君が「ミルクワンタン、食べないか。」
彼も久しぶりらしく、「まだ店あるかな」と呟いている。
「もっと先だな、通りをひとつ越えて、あの路地かな」
「・・・あった!」
もともと二人とも眼がよくて、おかげで早くからそろって老眼になった。今でも遠目は利くのである。
向こうの路地の入口アーケードに10軒ほどの店の名が掲げられ、中でここだけは店名ではない、ミルクワンタンの文字がバックライトに照らされて黒々と。
路地奥の左側、狭い店はほとんど満席で昔より繁盛しているか。奥の畳に一卓だけ、ちゃんと僕らを待って空いていた。
O君が繰り返し「ミルクワンタン」と言うのが、聞こえないのか無視してるのか、おじさんは自分の出したいものを出すように見える。
向かって左のお椀(食べかけで失礼!)、これは何だろう、玄米に麦や雑穀、納豆などを混ぜたものがひどく美味しい。そして目当てのミルクワンタンは、往時より小ぶりで具も彩を添え、これまたヘルシーに変身したようである。芋焼酎のロックに、隣席の人からコンニャクを分けてもらって、気持ちよく飲んで食べた。
壁のポスター類がレトロだったり新しかったり、何だかとても懐かしい。敦煌の写真が何枚か混じっている。
安土桃山から江戸時代あたりの、日本の美術の素晴らしさをO君が言い出した。宗達の風神雷神や浮世絵のこと、フランスなどに起きた日本ブームは、東洋への漠然とした憧れの結果ではなく、優れた「日本」の具体的な発見であったことなど。
「みんな楽しそうだな」
見回せば客はすべて男性、仕事帰りと見える人々が、なるほど全員笑っている。難しい顔がひとつもない。
「いつまで続くんだろう」
本当にそうだ。だけどあの店が、少なくとも今日この日まではあったのだ。
何とか、なるかもな。
夕べO君と、久しぶりに食べた。
凄いんだ、これ。
能書きは帰宅後に。

帰宅後の能書き。
初めて食べたのは、もう何年前になるだろう。
O君が「ミルクワンタン、食べないか」と言うので、有楽町のガード下をけっこう奥まで入って行った。油じみた狭い店内で、そのものがドンと出てきた時の、何と言ったらいいかあれはやっぱり感動だよな。
でっかい器に真っ白な温ミルクが満々、そこにプカプカと浮き沈みする、これも真っ白で大きなワンタンたち。誰がこういうもの考えるんだろう、子供の頃、御飯にミルクかけて食べたのを思い出しながら、美味しいというのかすごいというのか、「食べた」という壮挙でお腹いっぱいである。
めったに有楽町界隈に行かないし、他所でお目にかかるものではないから、すっかり思い出の一コマになっていた。
そこへまたしてもO君が「ミルクワンタン、食べないか。」
彼も久しぶりらしく、「まだ店あるかな」と呟いている。
「もっと先だな、通りをひとつ越えて、あの路地かな」
「・・・あった!」
もともと二人とも眼がよくて、おかげで早くからそろって老眼になった。今でも遠目は利くのである。
向こうの路地の入口アーケードに10軒ほどの店の名が掲げられ、中でここだけは店名ではない、ミルクワンタンの文字がバックライトに照らされて黒々と。
路地奥の左側、狭い店はほとんど満席で昔より繁盛しているか。奥の畳に一卓だけ、ちゃんと僕らを待って空いていた。
O君が繰り返し「ミルクワンタン」と言うのが、聞こえないのか無視してるのか、おじさんは自分の出したいものを出すように見える。
向かって左のお椀(食べかけで失礼!)、これは何だろう、玄米に麦や雑穀、納豆などを混ぜたものがひどく美味しい。そして目当てのミルクワンタンは、往時より小ぶりで具も彩を添え、これまたヘルシーに変身したようである。芋焼酎のロックに、隣席の人からコンニャクを分けてもらって、気持ちよく飲んで食べた。
壁のポスター類がレトロだったり新しかったり、何だかとても懐かしい。敦煌の写真が何枚か混じっている。
安土桃山から江戸時代あたりの、日本の美術の素晴らしさをO君が言い出した。宗達の風神雷神や浮世絵のこと、フランスなどに起きた日本ブームは、東洋への漠然とした憧れの結果ではなく、優れた「日本」の具体的な発見であったことなど。
「みんな楽しそうだな」
見回せば客はすべて男性、仕事帰りと見える人々が、なるほど全員笑っている。難しい顔がひとつもない。
「いつまで続くんだろう」
本当にそうだ。だけどあの店が、少なくとも今日この日まではあったのだ。
何とか、なるかもな。